コンテナガレージ

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重いと外に引っ張られる 1-4

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 Z町からO市市街地に向かい車で数分、小学校を左手に道なりの右カーブから左手に進む脇道が伸びている。道の脇には生い茂った草木と所々に佇む一軒家。しばらく進むと更に二手に分かれる道。右手に曲がるとおそらくは引き返す方角に進路を取る。その右手を更に進む。道は相変わらず車一台でも通るのがやっとの道幅。すると、前方にトンネルが見えてくる。背の低い細長いトンネルでわずか50メートルほどの距離であろう。鈴木は、そのトンネルの手前に車を降り、慌てて車外へ出る。
「O署の鈴木です」パトカーが一台、先に到着していたようだ。その他に一台の車がトンネルの入口で精一杯脇に寄せて停車していた。運転手と思われる女性が腕を組んでイライラと行ったり来たりを繰り返す。
「こちらです」警官は一名だけ、女性から意識をはずし警官に続いてトンネルへ。暗いトンネルの内部にはドーム状の天井に常夜灯がパネルのように張り付き昼間でも活躍の場を与えるように黄色く色づいて点灯していた。ジメジメとした内部、雨でもないのに天井から水が滴っている箇所が幾つか見られる。警官を先頭にトンネルの中間辺りまで来ると先を照らしていた懐中電灯は床の物体に光の焦点を集めていた。
「なんだ、これ?」黒く汚れた人型の塊。手や足の形状はその原型を残して、身にまとった衣服だろうか布は真っ黒な色で覆われていた。仰向けである。髪や額、顔のパーツからそれが表だとはわかる。しかし、凹凸がみられるだけで表情までは伺えない。警官もじっとその死体らしきモノを直視はできないようで、口元を手で抑えていた。「死体ですよね?」警官は私に聞かれてもという顔を作り自分の仕事の域を超えていると判断して地面に転がる物体の判断を放棄していた。首をひねり、搾り出してこう答える。
「どうでしょうか?おそらくは、人ではないですかね。大きさもちょうど人型ですし」鈴木は屈みこんで死体の鼻と口元に触れないように手をかざした。息はしていないようだ。首元らしき場所に指をあてる。脈はない。
「通報したのは?」顔を上げて警官に聞く。
「あそこにいる女性ですよ。ここを通り抜けようとした時にうっかり轢きそうになって気づいたらしいです。車を降りて確認したら人のようだったので、110番をしたと」警官が話している時に鈴木はトンネル外の女性を見ていた。急ぎの予定があるのだろ、ひどくイライラして落ち着かない様子はここからでも判別できるくらいだ。