コンテナガレージ

コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

重いと外に引っ張られる 1-8

f:id:container39:20200509131858j:plain

 「そっちの肩を持て。上に上げるぞ」黒い液体が薄れた箇所を持ち仰向けになった死体の肩を鈴木が腰あたりを熊田が持ち、ぐっと地面との空間を開ける。
 死体の背中も体の前面同様に黒く汚れていた。覗きこんで背面からお尻を観察すると、目配せでゆっくりと死体はまた地面に接着。人の体は力が抜けるとこれほど重かったのかと思うのである。
「全体が黒いですね、油のような粘りもある。樹脂にも似ている。でもやはり色は黒ですね。染色や色が移ったとは思えまえせん」
「調べればわかるさ」熊田は呟くように言う。「車の中でPCをいじっているのは誰だ?」鈴木を見ないでいった。
「通報された方です。たまたまここを通りかかって見つけたそうですが、ちょっとおかしくはないですか?」手をドーム状の天井に向けて鈴木は疑問をぶつける。「休憩のためにこの道に入ったと彼女は主張しています。車の走行していた方向からこの道に入るには大きく回り込まないと入れません」
「何が言いたいんだ?」熊田が片目を閉じてきく。
「だからですね、この死体を発見するために道を通った、あるいは通らされた」
「誰にだ?見つけてくれと依頼されたのか?」
「……おそらくは」
「とても抽象的です。それに、論理が飛躍してもいます。何をどうやって感じたのかを当てはめるだけなら経験と情報だけも成立します。まずこれは事件かそれと事故か、自殺かの判断からその先を考えるべきでは?明らかに、他殺であると鈴木さんは思っているようですが」
「だって、どうみたって自分でやったにしては無駄が多すぎる。自殺なら、こうして首なんかをくくるか飛び降りたりしたほうが手っ取り早い。得体のしれない粘液を浴びて死ぬ意味が見出せないよ」鈴木から種田は逆光となり、その表情はみえない。おそらくは、いつものように無表情だろう。
「もしこれが自殺なら、こうやって死にたかったのでしょう。動機に理解を求めるのは無意味です」
「何もわかっていないうちからあれこれと考えると捜査に余計な私情が挟みこんでしまう。現状での想像はこれぐらいにしよう。死因もこの黒い液体の正体もわからいのなら、考えないほうがマシだ。それよりも、この死体が運ばれてきたのか歩いてきたのかだ」