コンテナガレージ

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重いと外に引っ張られる 1-13

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「……」熊田はタバコを取るだけなのに嫌に手間取っている。ドアを開けて腰をかがめていた時間が長すぎた。怪しい行動は続き、ドアを閉めると車のロックもかけた。鈴木は捜査の途中で駐車された警察の車両を盗んだ事例など聞いたことがない。まして、この人気のない道路である。通行人も歩いてはいないのだから、それほど慎重にならなくてもと思う。
 3人は遺体が寝かされていた場所を避けて先へ進んだ。トンネル出口は、入り口と特に変化、違いは見られない。ざっと周囲を見回して、やはり伸びた草と民家と空だけは多少赤みを帯びてきたようにも見える。こちら側から国道へ続く道に民家が五軒と市営住宅のような年季の入ったマンションとは言いがたい建物が一棟。あとは、以前工場だったであろう跡地に更地。民家の一軒に軽自動車が一台、止まっていたのでその家で話を聞くことにした。車があるのだから在宅はしているだろうという算段である。先頭を歩いていた鈴木が聞込み。民家からは若い女性が応対した。鈴木は多少驚いた、野次馬はすべて年配の女性だったからであり、午後のこの時間帯に若い女性が家にいることが想像したがったからである。眠そうに受け答え、風邪のような声で療養中なのだと理解する。今日、車を使用したかとの質問には、使いはしたがトンネルは通っていない、それにこのあたりには乗用車しか止まっていないし、まず近隣住民がトンネルを抜けて国道に出ることはしないとの回答であった。斜め向かいに建物についても聞いたが現在は使われていないアパートだそうで、取り壊し費用を出し渋っての現状である。もういいですか、と眠そうにダルそうに最後に言い渡しこちらの返答前に彼女の表情とこちらの続かない表情をみて女性はドアを閉めた。鍵を締める音もかすかに聞こえた。
 熊田の手は駐車場に止められた軽自動車のボンネットを触る。
 冷えている。車の不使用は本当らしい。
 タバコに火をつける。種田からの指摘。携帯の灰皿を彼女に見せる。おそらくは、刑事として灰皿のない場所で喫煙は模範となる警察として云々とのいつもの恫喝に匹敵する威嚇である。全く、と思う反面に規律の遵守は種田のおかげでもある。刑事だから全ての規範を守れるかといえばそうではないと思う熊田であるから、多少の無作法は顕在されるのだ。それが細かな市民からは、苦情として署に届き、回りまわって上司からのお叱りで判明していたが、種田と組むようになってから、そのお叱りも激減していた。一定の距離を保って立つ種田をちらりと盗み見た。