コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

重いと外に引っ張られる 2-3

f:id:container39:20200509131858j:plain

「さあて、そろそろ行くかな。じゃあ、今のうちにゆっくりと寝ておけ。どうせ直ぐに仕事が舞い込んでくるから」ポンポンと鈴木の肩を叩いて部長はそそくさと消えてしまった。
 嵐のように去った部長である。寝ぼけがまだ残っている相田である。肘をついてぼんやりと窓をみようとすると、自分のデスクに灰皿が置かれていた。これでは自分がここでタバコを吸ったことになるので、仕方なく灰皿を喫煙ルームに持って行こうとした時にばったりと女性事務員に出くわして、持っていた灰皿を目ざとく指摘され、キャンキャン、ギャンギャンと小言を言われた。私じゃないんです、と言っても室内には相田の他に誰も居ないのだから、その言い訳は通るはずもない。ドアは開いたままで廊下中に注意される私をみられてしまった。
 寝て起きた相田は空腹の音に急かされて地下の食堂に足を向けた。たらふく食べると予想通りの姿になりそうなので、てんぷらうどんだけを食べることにした。ピーク時を過ぎた食堂は閑散として、たっぷりと時間を取って食事を摂るのは相田だけである。食堂の閉鎖時刻は午後5時と決まっていた。現在は4時過ぎ。10分ほどで食べ終えるとまた2階に戻る。
 喫煙ルームでタバコを吸っていると署内の動きが騒がしくなる。そういえば、強盗犯の捜査は進展したのだろうか、捜査員たちがまだ戻ってこないところを見ると結果は自ずとわかる。
 午後5時前に熊田たちが戻ってきた。ブース隣の自販機でコーヒーを買う熊田の姿が見て取れた。疲れた様子はいつものことだ。コーヒーを持ってブース内に入る。
「お疲れ様です」
「まだいたのか」失礼な発言をさらっというあたり、機嫌はそれなり良さそうだ、と相田は感じる。
「一応、待機を命じられてますから。それよりも、また事件ですか?」署内をブラブラと歩き各階の喫煙ブースでタバコを吸うだけで自然と情報は耳に入る。
「ああ、もしかしたら前の二件と関連があるかもしれない。今は、鑑識を待っている」熊田はぐびっとコーヒーを半分ほど飲み干した。「銀行強盗のほうに駆り出されていたのは、もういいのか?」
「応援とはいえ、現場に到着するや監視カメラの映像を再度確認ですから。呼んだわいいが、与える仕事がなかったのでしょう」口の端をひきつらせて相田は話した。
「そうだ。お前暇ならこっちを手伝えないか?」
「いいですよ、じっとしているのもう飽きましたから」
「鈴木と組んでくれ。新しい事件の整理だけも手一杯なのに、前の二件の捜査も手付かずだからな。頼むぞ」