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重いと外に引っ張られる 4-2

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 三件の事件(ここでは銀行強盗は考えないこととする)はどれも女性が被害者である。それも独身の女性である。殺害場所と遺体の発見現場はおそらくは異なる場所であると推測された。第一の事件での被害者及び遺体周辺の血液量と致命傷となった際の致死量の血液に大きな開きがあることから犯行現場と発見現場は異なると断定された。第二、第三の事件も同様である。ただ、被害者の共通項は今挙げたような大まかな括りでしかないのだ。犯人は特定の人物を選んで犯行に及んでいるのではないのかもしれない。犯行現場は5キロ圏内に収まる。仮に犯人の行動範囲内での犯行とすれば大いに捜査の範囲が絞れ、地道な捜査によって何らかの証拠はつかめる。が、偶然、犯行場所が近くなっただけである可能性も捨て切れない。車を利用したのかもしれないと、反対の意見も当然に浮かぶ。
 カウンターの中から美弥都がコーヒーを二人に運ぶ。
 コーヒーに一口つけて、熊田は美弥都に話しかける。彼女は下を向いて、なにやら動かしているが手元が見えない。
「あの、日井田さん?」美弥都は射抜くような目で熊田をとらえる。「いま、よろしいですか?」
「暇そうに見えますか?」種田と似た作りの言語機能を有しているようだが、種田よりももっと冷静であるのに憎めないちぐはぐな印象を彼女からは受ける。
「少し、お時間をいただけないでしょうか?」
「具体的におっしゃってください。それに、どう見ても現在店には私一人です。これは常套句の、警察への協力は市民の義務だ、ということでしょうか?でしたら、私だけかしら?頻繁に協力を要請されるのは?」
「それはおっしゃるとおりです。ただ、もしも、10分程度時間をいただけるのなら、お話を聞いていただけないかと思いまして……」前回の事件よりも熊田の丁寧な対応が幸いしたのか許可はあっさりと降りた。