コンテナガレージ

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重いと外に引っ張られる 5-4

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「と、言うわけです」のびた麺に琥珀のスープ。食べ急ぐ繁盛店ならではの後続への配慮もいらない。あんな狭い空間で早く食べろと急かさせて食べるのはどうも味を求めてまで並ぶ意味が無いように感じる。相田はとっくに食べ終わり、タバコを吸っていた。鈴木も最後の一口をすすり、グビッとスープを残り半分ほど飲んだ。
「答えに筋は通っている。捜索願は警察内で共有していないとそもそも意味が無い。怪しいが、これ以上踏み込むにはもっと明確な証拠が必要だ」
「彼女はやはり犯人ではないのでしょうか?」
「さあな。ただ、親子だから殺さないとは言い切れない」
「子供を殺すってどんな気持ちなんだろう……」
「感情移入は客観的な視点での物事の本質を失いかねないから、さっさと離れたほうが得策さ」
「ですよね、わかってはいるんですけど、一旦相手の立場に立たないとどうも事件が見えてこなくて。熊田さんとかはどうやって事件と向き合っているんでしょうかね?相田さんはどうです?」
「俺はあの人みたいに頭が良くない。ただ揺るぎない証拠から操作を進めるしかできないといったほうが正しい。論理的に事件を解き明かすには、経験と知識と勘と飛躍が必要だから」
「熊田さんって、それほど頭脳派という印象は受けませんけど……」箸の代わりに手に持ったのは爪楊枝。ひと通りの掃除を終えると行き場のなくなった楊枝は暇つぶしのための存在に成り代わり、上下の歯に挟まれている。
「バカ、あの人はエリートだぞ。部長の下についているのはあまりにも一人で事件を解決してしまうから上が嫌がって別の部署に移動させたのさ。目立ちすぎたんだな」
「へえー、それは初耳です」
「誰にも言うなよ」
「秘密って誰かに話すから秘密なんですよ」どこかで聞いたセリフだ。
「言ったら、どうなるかわかっているんだろうな?チッ、もうどうでもいい。帰るぞ、自分の分は払えよ」カウンターに代金をおいて相田は先に店を出ていってしまった。