コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

水中では動きが鈍る 1-5

f:id:container39:20200509131858j:plain

「その説明だと犯人は銀行全体となってしまいます……」そう言ってから種田は言葉の続きを想像する、紙幣が移されていないのは移動したと見せかけるとの洞察ができあがる。
「銀行員が強盗をはたらかないと誰が決めた?警察官や刑事、役所の職員や議員、会社員、役人、消防署員、救急隊員、医者、看護師、職業である前に人だからな、罪ぐらい犯すよ。思い込みは、銀行員が銀行強盗をはたらかないという心理につけ込んだために起きた」
「早く知らせないと!」
「もう遅い。証拠はなにもないんだ、監視カメラも犯人の体格や利き腕しか読み取れない。顔はマスクで覆っている。髪の毛等の証拠品も行員が犯人ならば現場にそれらの人物たちのものが落ちていてもなんの不思議もない。また、銀行近辺の商店や住宅、ビルに取り付けてある防犯カメラの映像はどれも銀行の出入り口を画角から外している。銀行側の要請で周辺に防犯カメラの取り付けの際にそのような注意喚起が促されたそうだ。もちろん、従う必要性は全くないが、この街で生きているならばこの銀行の利用を余儀なくされる、大手の銀行だ。圧力をかけてでも従わせた可能性もあるだろうな」
「犯人たちは銀行員かあるいは元銀行員、人数を考えてもあの銀行内の行員だけでは人手不足だ、それに休暇など不在で出勤していない者はすぐに判明してしまう……、銀行の関係者は退職者を含めた範囲に及ぶ考えると計画内にその点への対策も講じているだろう……」種田は、首の角度を下に向けて10°の傾き。