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水中では動きが鈍る 2-1

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「第三の被害者の身元を調べるほかにも、こなすべき仕事はあります」
「だから?死んだ者はもう生き返らない。しかし、これから殺される者は生きている。死体から見えてきたのは殺され方と死んだ事実のみだ。だったら、犯人と思わしき者に張り付いて犯行の間際で阻止するのが最も適している」
「ずいぶんと、アナログですね」
「おい少しそっちにずれろよ」相田のくぐもった声。
「無理ですよ、目一杯です。相田さんが大きいからですよ」屈んだ鈴木が体勢を変えようともがいているが狭い車内では身動きが取れない。
「何言っ……、お前今のは失言だぞ」
「小さいなあ、そんなことにいちいち目くじらたてないでくださいよ」
「小さくねえよ、お前だろうが小さいのは」
「相田さんよりは背は高いですよ」
「静かにしてください。外に聞こえます」種田が助手席からピシャリと言い放つ。
「お前が助手席なのにも納得出来ない。体格を考えたら俺だろう。先輩に譲る気遣いもあっていいと思うけどね」
「こんな場所で先輩に対する敬意を払わなくてもいつでもどこでも、まして感謝の言葉でなくても敬えます」
「だから、最近の奴は苦手なんだよ。素直に従っていりゃ可愛いものをさ」
「相田さん、種田のことそんなふうに見てたんですか。初耳です」鈴木が馬鹿正直な感心顔で言った。