コンテナガレージ

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ワタシハココニイル7-4

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「窓は施錠されているのか?鈴木、表から窓を開けてみてくれ」熊田がリビングをなんともなしに眺めて鈴木に指示を出した。

「鑑識が調べたので閉まっているとは思いますよ。外かあ」

「いいから早く行けって!」相田が鈴木のおしりを叩いた。追い立てられてしぶしぶ鈴木は壁にそって玄関に戻り、外に出た。

「ダメでーす、開きません」口の開き具合で窓越しの鈴木の言葉は読み取れた。

「ふうむ」熊田は立ち上がるとリビングに慎重に入り、左手の通路を進んだ。相田と種田も後に続く、遅れて鈴木が表から戻ってきた。引き戸は開放された状態で待機、洗面所とバスルームに洗濯機だ。死体が転がっていたり血痕がついていたりと言った非日常はここにはなくて安定している。熊田は洗面所下、配管の通り道や空きスペースの収納扉に手を掛けた。しかし、収納品は洗剤や浴室用スポンジのみでどちらも新品。洗面台にはコップと一本の歯ブラシ、うっすらと埃を被るドライヤーは自身のコードに雁字搦めで棚に収まっていた。バスルームを覗きシャンプー類の持ち上げると熊田は玄関に引き返した。そこでは外から戻ってきた鈴木がまた手をこすりわせて立っていた。

「なにか見つかりました?」靴にビニールを片足立ちではめる鈴木が浮かない顔の熊田に言う。

「いいや、二階をみてみる」

「一緒に行きます」鈴木が急いで後を追いかける。相田と種田はその場に残る。

 二階の間取りは二間、それぞれ独立した部屋でどちらも洋室である。銀色の、回すタイプのドアノブが年代を感じさせた。熊田は階段の真向かいのドアから入室した。右手に長く広がる空間、窓は二面。カーテンはない。窓際の角に合わせてシングルのベッドが見えた。簡易なベッドでマットレスと支える台が一体化した作り。閑散とした部屋でシーツは皺一つなく替えられた時を再現している。押入れも空である。鈴木が窓の鍵がかけられていることを確認。この二枚の窓も出入りには不向きだろうと熊田は思う。次に隣室を調べる。こちらは更に何もない。唯一壁に立てかけられた四十センチ四方のダンボルーが贅沢に部屋を占有していた。ダンボールに厚み、一枚でもなく箱とも違う、かぶせる蓋のように中に物がしまわれているようだ。熊田はそっと床にそれを寝かせた。

「なんですか?」鈴木は高い声で質問する。時折幼さが残る声を鈴木は発する。

 蓋をあけると絵画が出てきた。油絵。確証はないが、おそらくはそうだろう。絵について知識は皆無だ。もっとも絵の良し悪しを疑わしいと感じている、どこの誰が描いたのか、それを知っていても作者を隠して売ってしまえば上澄みを頼りする人々には優劣や好き嫌いの判断をつけられるはずがない。個人の自由で絵の価値をそれも金銭に置き換えるなどは理解の範疇を超える。

「鑑識から聞いていないのか?」

「はい、報告はなかったと思います。相田さ~ん、二階から絵が出てきましたけど鑑識からなにか聞いていませんかー?」鈴木は階段下に向かって叫んだ。

「聞いてない。持ち帰えらず部屋に置かれているんなら重要じゃないと判断したんだろう」

 「わかりましたぁ」

 暗い緑に一軒の家。全体に陰湿で重苦しい印象、油絵らしいといえばそれまで。人らしき影が家の前で見上げるよう、その顔が上を向いている。