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DRIVE OF RAINBOW 1-2

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 熊田と種田が駐車場に降り立つ。巡回の警備員が万全の防寒装備で歩いていたので、熊田がすぐさま呼び止めると警備員は小走りで寄ってきた。

「どうかされました?」二十代の青年が人懐っこさを全面に押し出して熊田に近寄る。整った顔立ちで人に対する裏の顔をこれまで作り出さなかった証が態度に現れていた。彼はいつ直面するのか、種田の知ったことではないので雑多な感情は剥離させた。

 冷気に侵入を許して熊田はスーツのポケットから警察手帳を取り出す。「こちらの責任者の方にお会いしたいのです」

「はい、あのう、課長はついさっき帰ったので、そうすると誰がいいだろうか」警備員は考えこむ。

「現状での責任者でかまいません」

「それだったら。ええと、事務所にいます」

「案内してください」

 警備員は駐車場を眺める種田の存在に気を取られてから慌てて熊田に直り、前方に手を差し出して事務所に連れて行った。屋根のない駐車場は深々と降り積もった雪で足先が歩くたびに埋まった。

 事務所は立体の駐車場内部、一階の出入り口からすぐの位置で、広さはプレハブぐらい。上がったままのブラインドから室内の様子が見えている、住人は二人で一人が斜め上方に首を傾けていた。ドアの正面にある脚の低いテーブル、それを挟んで二人掛けの年期の入ったソファ、その片方に斜めを見つめる中年の男性が座る。もう一人の男は右手に配置されたディスプレイに向いて座っていた。ディスプレイは壁に沿って二面、長い天板が壁にピタリと張り付いる。ドア側の壁面はキャビネットとその上にポットや個人個人の湯のみが埃が入らないように逆さまで置かれている。

「葉月さん、警察の方です」葉月と呼ばれた人物は新C空港B駐車所主任の葉月明夫で課長の小野田が不在のために実質のやり取りはこの男と行うことになる。熊田は瞬間的に警察と聞いて際立った反応それも嫌悪を込めた視線に先が思いやられるだろうとため息を漏らした。

 それとは対照的に種田は室内の暖かさに応じてコートの全面を開けて準備万端といった様相である。端的に表情にしかも初対面で警察に感情を表す神経を疑う。

「警察?」眉をひそめた葉月明夫が刑事たちに対面した。やはり刑事に対してよからぬ過去、それも一方的な思い込みを持ちあわせているようだ。

 熊田は先手を打って態度を崩した、高圧的な人物には低姿勢で相手にお腹を見せてさすってもらうのが最適である。悟られないための捨て駒。将棋を指したことはない、だって頭の中でルールと駒の機動性を叩き込めば盤も駒もまして相手ですら用意する必要性は皆無となる。虚しさなんて感情はとうに捨てた。勝ちたいのかそれとも楽しみたいのかを突き詰めると私はやはり勝ちたいのだ。楽しんで勝つ?ずうずうしい。結局は勝ちを望むのだから。

 

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