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DRIVE OF RAINBOW 1-3

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「O署の熊田です」

「同じく種田です」二人はお互いのまで自己紹介をした。

「刑事さんが一体こんな時間にどのようご用件で参られたのでしょうか。こっちは忙しくてね、あんた方の相手をしている暇はこれっぽっちもないんですよ」そう言いつつも深夜番組を観ていたし、食べ終えたカップラーメンの空容器も灰色のテーブルに転がっている。忙しい時に麺類しかも伸びてしまうカップ麺を食べることはしない。

「昨日の防犯カメラ映像を拝見したらすぐに帰りますよ」おっとりとした口調で熊田が迷惑をかけないことを告げて提案した。

「理一、交代だろう。牧野に代われ」事務所にいたもう一人の人物は葛西理一と言い、こちらも若く二十代から三十代の手前、短く刈り込んだ髪が特徴的で帽子をかぶっていたために頭頂部はぺたんと張りを失っていた。葉月明夫に急かされた葛西理一が牧野桃季と見回りを交代する。

「何でしたっけ?そうそう、防犯カメラだ」巡回から帰って早々牧野はPCの前に腰を下ろした。熊田の申し出に早くも答えようとしてマウスを操作する。「桃李、刑事さんのお願いに応えてやってくれ。俺は疲れたんで仮眠を取る。いいか?何かあった必ず知らせるんだ」念を押した主任の葉月はソファで横になると数秒も立たないうちに鼾を掻いて高らかに演奏を始めたのだった。咄嗟のことであっけにとられた熊田と種田は葉月の一連の行動をただ見つめていた。有無を言わせない姿勢、態度は絶対的な自信のなせる技で、元来備わっている要素ではないとすれば取得した経緯を聞きたいものだと思うが、見る限りたった数分の接触でもあの人が生まれながらに持ちあわせた性質であることは明らかなので、その考えをあっさりと捨て、牧野が開いた画面を覗いた。

「これが昨日の映像ですか?」熊田がきく。

「はい。ええっと昨日の午前零時の映像です。ご希望の時間帯はいつです?」

「午前十時頃の映像を見せて下さい」

「あの、何を調べているんですか?こういうのって教えてくれないものですよね」尋ねてはいるが、語尾は同意を促す言葉遣いで当たり障りの無い反面、相手に届きもしない。熊田は無表情で対応する。

「まだ捜査をはじめたばかりの段階ですから、何がどう繋がるかもわかりません。軽率な発言は混乱を生みます。安易に情報をネットに載せられる時代ですから、今のところ、捜査をしているとしか言えません」

「呟くのって犯罪ですか?」

「罪ですよ」種田が能面のような表情で牧野の背後で言う。天井の照明を種田が遮り表情に暗い影を落としていたらしい、牧野はびくりと肩を反応させて引きつった顔を浮かべると、そっと画面に注視した。映像は一画面に四分割の構成で、2つの画面が表示されている。つまり、カメラは計8台となる。駐車場の出入り口に一台、立体駐車場の入り口にも一台、外の駐車場のゲートから向かって奥に一台と手前の左隅に一台、立体駐車場の中には各階、地下と二階三階にそれぞれ一台ずつ配置されていると、牧野が説明してくれた。声は若干種田の圧力で震えていたが熊田は気にも留めずに話を進める。

 

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