コンテナガレージ

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DRIVE OF RAINBOW 1-4

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「空港から一番近い経路で駐車場に向かうと、どのカメラに最初に映ります?」

「そうですね。ううんと」牧野は画面に施設内の地図を呼び出した。無骨な人差し指で指す。「このエレベーターが最短です。エレベーターから全て地下と一階、二階と三階へ行けますね」

 映像は十時から十一時までが倍速で流れている。熊田たちは、被害者触井園京子の車がここに止まっている確証はない。車はまったく別の場所か、あるいはまた自宅のあの場所に駐車されたままであったかもしれないのだ。記録にはカードの使用履歴しか残されていない。種田は左側のもう一画面に目を凝らす。

「車のナンバーは?」牧野は熊田に問いかけてきた、種田には極力近寄らないことを選択したらしい。

「ナンバーをこちらで把握してるのですか?」熊田は聞き返した。個人情報に引っかかりはしないか、と種田は思う。

「ええ、入場ゲートに取り付けたカメラでナンバーを読み取っています。車の駐車場所を忘れたお客がよく訪ねて来ますよ。去年からカメラを取り付けて車の出入りを管理しています」

「それでは、車の正確な駐車場所までは記録されていないのでは?」

「駐車場の何階に止めたのかが判れば、すぐに見つかりますし止めた本人がいれば、行きしなに思い出す人のが大半です。まあ、なかにはそもそも車を止めなかった人もしつこく調べろって言ってきたこともあります」牧野の説明によれば各階のゲート通過に際してナンバーと時間が記録される仕組みで情報が管理されている。カメラ映像に重ねて画面の上に昨日、B駐車場の利用者ナンバーが入場と退出時間に分けて一覧になって表示された。種田もその画面を視るが、すぐにまた監視カメラの映像に戻る。熊田は手帳に控えた触井園京子のナンバーを口頭で伝え、牧野が手早く数字を打ち込んだ。

「昨日の午前十時三十一分に退場となっています。入場は一昨日の午後一時ですね」

「やはり彼女が空港まで車を運んできたのではないようですね」画面を見つめた種田が言った。声は恐ろしく低く女性の特有に高さはまったくといって感じられない。それは自覚をもって放たれた。

「クレジットカードを使用したのがもしかすると彼女ではないのかもしれない。同時に同じ場所にいれるとすれば、カードと彼女自身が離れている。そう考えるのが妥当だろうな」そこで熊田は牧野に言う。「退出時のカメラ映像を出してください」指示に従い牧野は警察のやり取りをまじかで聞いた興奮を抑えて、映像を画面に大きく映し出した。

 柱の奥に一台の車が映っている。軽自動車で彼女の車ではない。その更に奥の一台、間隔をあけた車は数時間前に見た彼女の車らしいが遠目に映っていて判別は難しい。すると画面の手前から人が現れた。女性である。顔が見えたらと思うとその人物がおもむろに振り向いた。しかし、遮るように車が彼女の脇を通過していく。見えた、映った女性は触井園京子である。熊田の確認に種田に頷く、体温が上昇した熊田の表情が見間違いを消し去る。

 

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