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DRIVE OF RAINBOW 3-2・4-1

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「なんだよ、驚かせんなよ」

「情報班に書き込んだ奴を調べてもらっていたんです」

「もう上層部がかっさらっていったさ」

「だとすると、情報はもたらされたってことですよね?」鈴木が不敵な笑みを携える。

「お前変なこと考えていないよな。よせよ、厄介事はゴメンだからな」

「相田さんしかいないんですよ。それに僕が一人でいっても、追い返されるのが落ちです。そんなの目に見えてます。お願いします、このとおりです。一生のお願いです。神様、仏様。相田様。大明神」

「熊田さんにはこの話、耳に入れていないのか?」

「はい。熊田さんは引き続き、書き込み犯を追え、とのことで、でも上層部同士のやり取りまでは報告していません。まだ、僕が捜査権を握っていると思っています」

「黙っているのはまずくないか?責任問題で割りを食うのは上司だ。お前や俺なんかは大した罰則を受けないだろう」

「それでも捜査を続けたいんです。僕が始めた、調べた事件ですから」

「……仕方ないないか」相田は熱意のこもった後輩の姿勢に気圧される。「その前にタバコだ。情報は逃げないから、一本ぐらいタバコを吸ってもいいだろう」

「ありがとうございます」

「バカ、そんなのは事件が解決してからだ」

 

 4-1

 不来回生は車に身を沈ませる、きしんだシートとの摩擦はなんと表現しがたい感触だ。出先までの数十分の移動に安全性に勝る走りの醍醐味を優先させてはいなかった。 男なら車が好きで当然だと言われるが、自分はそれらの部類に属さないだろうと子供の頃から思っていた。それはただの所有欲であり、穿った見方の温床である。非難しているのではない、私とは交わらないだけ。しかし、居心地は良い。空間の演出だと思えば、金持ちが大金を支払うのも頷ける。最新のテクノロジーを所有者のほとんどが仕組みを理解せずに買っている。かくゆう私もその一人で、関心はない。今は不具合も感じられない。

 徹夜明けのドライブは辛い。国道を車が爽快に走る季節は数カ月先で現状は神経をすり減らして視界に隅に光る赤や青の点滅を探し続けている。交通量の少なさが唯一の救いで、反対車線は数珠つなぎの渋滞。早朝のラッシュである。誰も考えることは同じで道は一本で朝には仕事が待っているから、混んでしまう。私はそれが嫌だったので、時間にとらわれない仕事を選んだ。クライアントとの約束は存在するが、細かな制約を除くと求められた答えを期限前にそれも一週間も早く公開すれば、驚きと感動がもたらされる。空間をプロデュースする。これが私の仕事だ。正式な名称はない。誰かが勝手につけてくれた、それが浸透、固着。どこで何を習ったなんて正直に言えば師匠も先生も見本もありはしない。インタビューにはそれとなく押し付けがましくない優等生の言葉で語っているが、どれも嘘だ。誰も私の中を覗けないのだから、信じてきたものを晒せば相手はなにかしら説明をつけて結論にいたってくれる。何が好きで誰を好いていてこれまでなにをしてきたのか。前例がないので、私の説明が拠り所。感覚に頼っている、そう話せば、鬼才や天才と褒め称えてくれる。もちろん、仕事も増える。だって何をしても許してくれる。

 人は何を信じて好みを決定するだろうか。

 タイヤが滑って停止。信号機は重く湿った雪を背負って健気に信号を送り続ける。

 感謝。

 車内では、見慣れないスイッチがインパネ周りを支配している。淡い光で最小の明度だ。

 

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