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DRIVE OF RAINBOW 8-3

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「そうだ」熊田が同意。

「触井園京子もM社の車で死んだ人物も繋がっているってことですか?」鈴木が高い声でいう。

「直接的な関係性は持たないが、連鎖的に影響し合っているとでも言うべきかな」

「手がかりがつかめそうな所だったのに、もう事件を調べ直せません。はあ、何だが気が抜けた」鈴木はデスクに平たく伸びる。

「今回のやり方は人一倍気に食わない」相田が舌打ち。「一度預けた捜査を利益のために引っ込めるのは、今までにはなかった」

「切羽詰まっている証拠だろう」熊田が欠伸をすると、伝染し他の三人も次々に大き口を開ける。連鎖反応。真似るよりももっと根本的な生きるための仕草に近いだろうか。熊田はふと見えてきたものがあった。しかし、とらえどころのないそれはすぐに恥ずかしがって隠れようとする。手を伸ばして掴んでみるが、ひらめいた時の姿とは違っている。なんだろうか。暗闇で遠くの先に光がかすかにみえたような感覚。

「熊田さん?」種田に呼ばれて目を開けると事務員の女性が書類の不備を訂正しにやってきたところだ。相変わらず、だらけた部署だと彼女の顔にそう書いてあった。バカ丁寧さのきわみである高慢な態度の取り繕い方も悟られていないと信じ込んでいて、わかり易かった。指摘された訂正箇所をあらためて書きなおし、引き出しの判を押すと彼女は早々に退散していった。おそらく、このだらけた刑事たちのうわさ話で盛り上がるのだろう。好きにやって欲しい。

「で、結局捜査は続けるのか、打ち切るのか。私は熊田さんに従いますよ」相田が沈黙した時間を切り裂いて終わりそこねた議題をテーブルに戻す。

「僕も同意見です。警察をやめるにはいい口実かもしれませんしね」鈴木は身を乗り出して言う。

「種田は?」二人の意思を聞かされて熊田はもう一人の捜査員の意思を確認する。

「私は真実が知りたいだけです。そのためには捜査の継続は欠かせません」

「決まりか」

「やっぱり決行ですか?」決断したばかりの鈴木がもう弱腰だ。

「今更怖気づくな」相田の叱咤。

「だって、悪事を働いているみたいでモヤモヤします」

「上層部よりよっぽどまっとうに警察をやっていると俺は思うけどな」相田が鈴木に言った。

「相田さんって、結構正義を志して警察を志望した口だったりして」

「お前、……この間の飲み代は割り勘にする」

「えーそんなあ、だってあれは相田さんがおごってくれるからついてったのであって、実は、あんまり行きたくはなかったんですよ」

「絶対に払わせるからな」

「今月は無理です。ひもじくて」

「……」呆れた種田がわかりやすく深い溜息を付いた。

「まったくどうなっているんだ、最近のやつは」そう口にして熊田は密かに思う。最近とは得てして自分の都合に合わせた見方でしかないのに。