コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

ROTATING SKY 1-1

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 警察に事情を聞かれたのが一週間ほど前。あの人の死を聞いてきたっけ、もう忘れてしまった。警察の顔も覚えていない、女性が一人いたのは思い出せる。

 今週も忙しかった。先週はようやく日曜に休みがとれたのに朝から灰都がくっついて離れない。買い物でもべったりと、男の子のほうが甘えるのかしら。私が子供の時なんて母親には叱られてばかり、でも私が悪いの。お転婆で、何かにつけて我を通し続けていたから。どうして私だけを叱るのって、母親に聞いていたっけ。私のことを嫌っていると思ったのだ。もちろんそんなはずもなく事あるごとに寄せられる私からの質問に、真剣に向き合って答えてくれた。

 私は灰都をきちんと育てているのか、生まれたばかりの時の不安は慣れとあの人の死とめまぐるしく訪れる毎日で忘れてやしないだろうか。灰都の甘えようはそんな私を想って、知らせてれているのではと思うのだった。

 久しぶりにお酒を飲んでいる。テレビは断続的にただ垂れ流されて、音量も小さくそれでもテロップでなんとか番組の流れは読める。夕飯の残り物でちびちびと晩酌。あの人がいなくなってから初めてのことだ。仏壇にはビールを供えた。特に、楽しい毎日ではないし、かといって最低でもない。これ以上があるかどうかを試す余力は私には今のところ見つからない。こうして、息を殺せる場所があるだけでも良しとしよう。息子がいてくれさえすればなんて幻想からはそろそろ離れるべきだ。あの子にしてあげられることを精一杯注がなければ。父親のぶんもね。

 私?私はどうでもいい。それぐらいの覚悟がやっと備わってきた感じ。仕事も順調とまでは言わないけど、とにかくこなしている。意味なんて考えたらたぶん、続けてはいない。灰都がいなかったら、もっとずっと前に辞めていると思う。

 昨日、義母さんから電話があった。お昼休みはまるまる電話で潰れてしまった。灰都の顔が見たいから年に一度でも帰ってきてほしいとのことだ。仕事が忙しい、生活面も往復の旅費を払えるほどの余裕がないときっちりと伝えても、何なら一緒に住まないかと提案してくるのだ。私はあの子とだけの生活を望んでいる。誰にも邪魔はされたくはない。頼ったら、手を掴んだらそれだけで戻れなくなりそうだから……。