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ROTATING SKY 4-1

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「大人が四人も乗るのは窮屈ですよ」熊田の新車に助手席に種田、後方熊田の後ろに鈴木、種田の後ろに熊田が陣取り、活気あふれる捜査員の命令を無視した行動が開始された。

 事件を追い続けることは、自らの首を絞める事態を誘発すると自覚しての捜査継続であった。無論、お咎めをまともに受けるのは上司の熊田である。しかし、当の本人は腹をくくったのか平然として仕事を楽しんでいる様子さえ認められる。タバコも車が走りだしてからは一本も吸っていない、通常ならば何かにつけて催促があるはずなのに……。

「カードの履歴も結局、調べている最中に上層部に権限が移動したのでカードを誰が使ったのかは、わからずじまいでしたね」鈴木は上司の運転でも寛いだ姿勢で背もたれに体重を預けて言った。

「北海道にいた触井園はそのことを知っていたのか、そこが焦点だ」相田は大きな体を窮屈そうに揺らして頻繁に腰のポジションをずらしている。彼が掴んだ両手で助手席に微細な振動が加えられる。

「知っていたんじゃないんですか。だって、ほら家に帰らずに生活していたんです、預金残高のチェックは怠らないでしょう、気にしないほどお金を稼いでいる様子はなかったですし」

「お前、銀行預金も調べたのか?」

「いいえ、そんなの服装を見れば収入が多いか少ないのかなんてことは、わかってしまうんです」

「ただ性格的に面倒で服にはお金をかけなくて、無頓着ってこともありうる」

「そうかあ、堅苦しい会社勤めでもないですしね。でもですよ、フリーのライターは、人となりも重要ではないですか?雑誌には顔写真や全身が記事と一緒に載せられています。種田はどう思う?」鈴木は助手席を伺うように顔を傾けて聞いてきた。

「紙の雑誌だけが仕事でしょうか?」種田が淡々と答えた。

「ウェブ上の記事か、そこまでは考えが及ばなかったな」相田がうーんと唸る。

「ネットで記事を書く仕事なんてあるのか?」熊田がリズムを崩すように部下たちに投げかけた。種田は熊田の言い方は狙っていると判断した。あえて無知なふりで、討論を盛り上げるつもりらしい。

「ありますよお」鈴木が餌に食いつく。「家電やPC関連の商品なんかはユーザーの言葉が重要です。購買者が市場bb気にするところですから、ネットで最新の商品を検索すれば話題の商品に対してのレビューは数知れません」

「通販の話だろう、それは」

「通販だけではなくて、芸能や近似のニュースから天気や噂なんかも記事になって投稿されています。個人の書き込みとはまた形態が違うんですけど、なんていったらいいんだろう……」

「仕事には変わりないだろう。何が通常で常識なんだ?要求とそれに応じた対価が発生しているのならビジネスだ」澄んだ空気の前方の鮮やかで鮮明な車窓を見つめて熊田が言った。

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