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ROTATING SKY 4-2

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「怪しいですよ」口をすぼめて鈴木が反論する。

「世の中で発表されている事柄なんてどれも正面を切って正しいとは言いがたい。裏付けも信じられている理論や論理に基づいて確証がなされているのが現状だ。それらの基準となる仕組みを正しいと信じているからこその定常であって、もしも基準が崩壊するとしたらこれまで培われてきたものを捨てる。その繰り返し」

「話が難しくて、よくわかりません」

「熊田さんが言ってるのは、仕組みは信じられる論理で成り立つのだから、常識や時代が変わればお前が言う怪しさも当たり前とか正しさに変わっていくんだ」相田は満足気に熊田の言葉を噛み砕いて鈴木に伝えた。

「大昔に携帯で話していたらおかしな人だって思われるのと一緒かあ」鈴木が一人で解釈し頷いた。

 車は国道を逸れると工場地帯から海沿いに移行、踏切を渡り信号を右折、二車線の道路に合流し触井園京子の家を目指す。しかし。上層部の捜査員に発見されないよう周囲に気を配り近隣のコンビニで停車した。

「鈴木、自宅周辺の様子を見てきてくれ」エンジンがアイドリングに移行、熊田がミラー越しに頼んだ。

「僕がですか?」

「お前以外誰が行くんだよ」相田は腕を組んでテコでも動かない態度を取っている。

「わかりましたよ」

 コンビニに車がひっきりなしに出たり入ったり、熊田の車は建物の角に正面から駐車されていて、買い物客の姿が助手席からよく見えた。お客の大半は、トイレを利用することが目的でそのついでに商品を買って車に戻り出て行くという流れ。

 歩いてくるお客はほとんどいない。この辺りに点在するの工場や学校で、片側二車線プラス中央分離帯の道幅でコンビニに一番近い信号機は二百メートルも離れている。対面の歩道からこちらまでやって来るにはかなりの距離を歩いてくることになる。自転車に乗れれば平坦な道なので苦にはならないだろう、と助手席の種田は思う。

 鈴木が息を弾ませて帰ってきた。「ハァ、ハァ。私服の警察官が一人だけで、捜査員の車両は見当たりません。捜査員もいないようです。調べ終わった場所ですから、もうここへは来ないんじゃないでしょうか」

「だったら好都合だ。移動する」

 見張りの警官はぞろぞろと連れ立って歩く連中、しかも現場に近寄ってくる人物たちを警戒しただろうが全員が一度ここを訪れ、空が広がる天候により顔が確認できる距離に近づくと警戒と緊張を解いて、すんなりと現場に入れた。やはり、上層部はここを調べてはいないのだろう。種田は三人の背中を見つつ、現場での再捜索の意味を探った。車中ではまったく思いつかなかった。熊田はどこに違和感を覚えたのか、皆目検討もつかない。同様のものを見てきたのにだ。