コンテナガレージ

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ROTATING SKY 6-1

 これまで守ってきたものが壊れていくようだ。刑事たちの来訪に、私は職場での居場所をなくしつつある。面と向かって警察が来た理由を聞いてこないだけでも、良しとしよう。

 昼食の休憩時間に、上司に呼ばれた。警察と話をした会議室である。もう見られることも上司に呼び出されても平気、結びつけてこじつけの解釈で勝手に盛り上がれば、と切り離して考えたら体が楽になった。

「警察が何を聞いてきたんだろうか?その、何か、事件に関わっているとかではないだろうね」心配なのは私の身を案じてのことではなくって会社に降り掛かってくる火の粉の処理に焦点が合わさっているのだ。正直といえば正直。誰もがやっている。咎めるなんて無粋だ。

「……主人の事故について、聞かれました」

「ああ、理知のか」上司は理知衣音を不憫に思い、なんとも言えない悲しげな顔で言う。「皆の事は私から注意をしておくよ。……それでその、今になって事故じゃなかったなんて言い出しているんじゃないだろうね」

「いえ、そのまさかです」

上司の口が綺麗な円を作る。「ほおっ。またどうして。もう何年も経つだろう」

「詳しくは教えてもらえません」衣音は殺人事件があったことと、理知の事故車両と同車種の所有者が亡くなったことを黙っていた。「ただ……」

「ただ?」

 衣音は首を振る。「なんでもないです。あの、もういいですか。私、ご飯まだなんです」

「ああ、それはすまない。いいよ、食べてきて」

 ドアに手をかけた衣音に上司が付け加える。「理知さん!やましいことはないね?」疑いの眼だ、まったく誰もがあんな目をしている。

「それははっきりといえます。何もしていませんし、これからも会社に迷惑をかけることもありません。私は働かなくてはなりませんから、ご存知であると思っていましたが」軽く牽制を入れてみた。

「そうだったね。すまない」上司は苦い顔をして肩をすくめると頭を下げて謝った。屈服も訂正もいらない。

「失礼します」ドアを通常より強く閉めてしまった。

 理知は歩きながら残り時間を計算。駐車場に出て車に飛び乗った。残り時間は三十分。近場のコンビニは目と鼻の先、交差点の角にある。ネックは信号での待ち時間。それだけ。

 コンビニでガッツリ、ボリュームのある焼肉弁当とお茶を買った。いつもより高額な買い物。節約が常だとこういった突発的な買い物がいかに無駄をはらんでいるかがわかる。

 レジは弁当の温めで渋滞していた。時間が惜しかったので理知の番になると、温めを拒否して直ぐに車に乗り込んで、車中で弁当を平らげた。同僚が私を見ているかもしれなかったけど、私はお腹が減っていて食べる時間が限られていて、ここで食べないと午後の仕事に支障をきたすので止む負えないの。嫌いにならないでという気持ちはある。けれど、直接言える場面は皆無に等しいのなら、取り合うべきではない。

 残り二十分。弁当は五分で完食、お茶で流し込んだという方が正しいだろう。車が一台理知の横につけられた。助手席から黒のスーツにネイビーのコートを着た男がドアを出たままこちらを睨んでくる。相手は立っていて近い距離であるから正確には相手の顔は見えてはいないが、躰の向きはこちらが正面で、コートから覗くネクタイが揺れている。しかし、私には時間が迫っている、エンジンをかけたら去っていくだろうと、暖気も兼ねてエンジンをかけた。