画像も送られてきた。襲われたバス停と駅前の写真。時期もあの時と同じ季節。若干、背景が変わっていた。まっ平らな土地が背の高い覆いで囲われてる。無機質な壁。空も鈍色。上空を四方からのアングルでシャッターを切ったのだろうか。高解像度で、高画質。私が新しい機種に変えたのだと知っている、そんな予感。あの事件からは逃れられないと言いたのだろうか、だったら直接口でぶつけてみればいいものを、なんでまた回りくどい方法を選択するのか。
ああ、これが最善だと自負してるのか。現代に生まれた人間か。ありがとうも文面で察することが可能ならば、手紙のそれでもかわりはない。無論、ものとしての扱いに手紙は分別されるが、内容はどちらもかわりはない。
息子に手紙を書くよう言わないのはなぜだろうか、サンタクロースにはメールだって届くのだ。願いを短冊に書くのは、風物詩で毎日の出来事ではないから許されているんだろう。
日が暮れて闇が支配する時間帯にこっそり寝床から這い出す。
月が綺麗ですね、呟いやたのはいつ以来。
ベランダに出て月の鑑賞会。
隣の寝室では灰都の寝息。
凛と張り詰めた気体が尖った神経を撫でるように解きほぐす。
なぜ私は生きてるんだろう。思考は傾いた。あの時に死んでしまう運命ではなかったの?
あの人も私よりも先にいなくなった。
灰都だっていつ消えてしまうか……。
疲労が襲ってきた。至る所の筋肉が悲鳴を上げているようだ。
取り戻した温度センサー。
室内は温かい。
そう私の血だってたぶん温かい。
見てみたくなった。
血だから、これが巡り巡って体内の温度を保っている。
だったらそれを見せてみろよ、隠れてないで出て来なさい。
見てあげる。
それが私なんだから。
もう、偽るの止めた。
私を見つけたの。
給油の合図、ファンヒーターが闇で赤く警告。
わかってる。もう、思い出したよ。