コンテナガレージ

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焼きそばの日2-2

「逆効果、お客の不満を煽るだけ」館山は店長に進言。「私が整列させます」

「いや、国見さんに任せる。お願いするよ、国見さん。そのマスクを前面に押しだして、声をなるべくからした状態で大声を張り上げて」

 国見は躊躇いがち、店長と店外とを交互に見やって、しかしぐっと力を込めてドアに手をかけた。隠れた口が見えていたら彼女は食いしばった真一門の口が見て取れただろう。

 彼女はまず、外に出てドアを閉めた。篭った声が微かに聞こえる、身振りと手振り。すりガラス越しに異常な事態を簡潔にお客に伝えている、発言の内容はこのようなことである。

 店の営業はこれ以上の混雑が予測されれば中止も視野に入れた対応をとらざるを得ない。お客様には不本意であるが仕方のない対応と了承していただきたい。また、店本来の列の並びは看板に書いてある方法をこちらではあらかじめ伝えていた。よって、それに準じていないお客様に関しては、歩行者及び近隣の店舗への迷惑になるため、一度、隊列をこちらで指示に従って組みなおしていただく。最初に列に並んだお客から優先的に注文を受け取るのでご理解ください。ただし、本日のランチはテイクアウトのみでしかもメニューは焼きそばパンの一品のみ。店内での飲食は行っておりません。以上が店を開くために守っていただく事項ですが、よろしいでしょうか。

 小柄な国見はドアの前で手を挙げた。どうやら反対意見は上がってこないみたいだ。

「お客さん、入れますね」ドアから発声と人前の緊張で赤らんだ国見が顔を出す。

「いいよ」

 席の番号順に、お客の誘導を開始した。店長はテーブルごとに注文を受け取り、一テーブルまとめてお客を入れ替える作戦を国見に伝えた。案内を待つ間に会計を済ませ、お客には食事の出来上がりをテーブルで待ってもらう。

 お客が埋まるまでは国見が案内したテーブルを小川が回り、個数を聞き、会計を済ませた。そして、国見は思い思いに並んだ外のお客を誘導、できる限り入り口に近い人を優先的に選びつつ隊列を整える。いくらか不満の声が上がっていたようだが、ものめずらしいお客へはそれなりの応対でいい、と店長は常々接客担当の国見に言っていた。指導というほどの熱の篭った意見の刷り込みではない、むしろ提案に近い軽い約束事。自分は彼女たちではない、という意識が店長のスタンス。指導に見立てた、カモフラージュの意見の押し付けに辟易する場面をもっとも嫌う店長ならではの主張であった。