コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

焼きそばの日2-4

「他のお客様にも同様の環境で購入を待っている。その中であなただけが一人食べ始めるとお客さんの気がそがれる恐れを私は懸念してます。今日は無秩序に列ができあがってしまった。通常ならば店内のお客入れることはテイクアウトでは行っていません。ご理解いただけたでしょうか?これ以上の逸脱行為への対応は難しい」

「私はね、あなたの作る料理に感銘を受けつつあるんですよ」男性は立ち上がり熱弁を振るう。相席の淡い薄手のカーディガンを羽織った制服姿の女性は軽く体を振動、胸に手帳ほどの厚みのある財布を抱える。「絶対にこれは、できたてを食べるべき、と私のセンサーがびんびんに働いてる。わかってくれますかね、私は久しぶりに期待感を募らせているのが、五歳の、あのお祭りの出店以来のわくわく感ですよ。甘いソースの香り、芳醇な甘さと程よい酸味が利いた味が舌に染み渡る。肉とキャベツの触感が麺と絡んで相性は抜群。それに加えて、こちらも引けを取らない麺を包み込むパンの甘さ。食べていなくても想像に達する、だけども味を確かめてみたい郷愁にも駆られる。すばらしいんですから、あなたの作る料理は」褒められたのか?店長は首をひねった。相手の熱量が大きいほど店長は距離を取りたくなってしまう。ただし、まだお客自身がもっとも崇高で大切な、世界で唯一の存在であると己を認めている分には評価に値する。

「規則ですから。順番にお待ちください、大きな声を上げるようでしたら、退席をお願いいたします。店外で待っていただくしかありませんので」店長はきびすを返した。声がかかることを八割強予感した。しかし、男性はおとなしく座ったようだ。一斉射撃の視線が後押し。

「店長、なんて言ったんです?」一連のやり取りを厨房で見ていた小川がきいた。

「状況を丁寧に話しただけだよ。国見さんへの訴えであの人の要求はほとんど解消されていた。残りは落としどころのつけ方に困っていたんだ。だから、僕が出向いて、国見さんと同じことを説いた。店の責任者に言われた、それがあの人を納得させた」

「とんちみたい」館山が呟いた、彼女はカップにスープを移し変えている。

「金槌のことですか?」

「それはトンカチ」

「コロッケですよね」

「メンチだ」

「郷愁に耽っているんだぁ」

「センチだ。お前、わざと間違ってるだろう」

「そんなことありません。リルカさんが、突っ込むから私が調子に乗るんです」

「人事みたいに言うなって、ほら、袋に詰めて、次はいくつ詰めるんだ?」

「ああっと。四つです」小川は会計とテイクアウト用の包み紙に商品を入れる作業を手伝う。彼女がこの店で最長距離を走り回る人物だ。下っ端特有の活動量。

 お客の騒ぎを収めてからは、各自持ち場に戻り、作業を再開して単調な工程を幾度も反復する。厨房と店員の体内時計はめまぐるしい作業と応対をこなす短い時間の区切りを背負って高速に過ぎた。