コンテナガレージ

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焼きそばの日4-1

 店はその日のディナーをこなして、平日初日の営業を終えた。店を閉めて店内の清掃が終わり、小川は気になっていた昼の契約について店長に尋ねた。店長は注文用紙に、個数を増やした小麦粉の書き込んでいる。

「フェスの出店を承諾して、店長本気ですか、店はどうするんです?」

「どうもしないよ。祝日だろう、フェスの当日は。相手方の申し込みは若干解せない点がなかったわけではないよ。だけど、堂々と僕たちを利益が見込める集客の目玉にしようって誠実に言ってのけた。あれで、焼きそばパンの味のおいしさに惚れ込んだって言っていたら、承諾はしなかった」

「他人事みたいに言わないでくださいよ」小川はご立腹だ、頬を膨らませて、両手は腰にあてている。泡のついたピンクのスポンジが右手に。「土曜日だってお客さんが店に来るかもしれません」

「そうだね。僕はだけど、土曜日のお客さんは平日とは別に捉えているんだ」店長は注文用紙から目を離して、彼女と目を合わせた。若干、小川が首を後方に移動させたのを見逃さない。「客単価はいいだろうね、週末だから。羽を伸ばしたい、あるいは行動する範囲を変えている、そういった人たちの足は重たい味みたいに毎日は続かない。取り合っても見込めるのはやっぱり・たまに、といった間隔。取り合うなとも違うね。見てはいるし、監視もしてる。だけど手を出さないことも僕は重要だと思う。本当に必要だったらいても立ってもいられないからね」

「後半は、話の内容、論点がずれています」カウンターで皿を回収する国見に指摘された。ホールには国見のみ、彼女の声は朝よりも回復の兆しがうかがえる。ただし、まだ予断を許さない状態。

 女性が声をからすと途端に年齢を加えるのはどうしてだろうか、店長は疑問を浮かべる。小川が話しを続けた。彼女の背後では水道の水が一定量流れ続けている。店長は人差し指を指した。小川は慌てて手の泡を落とす。その隙に店長は倉庫へと移動した。