コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

焼きそばの日8-3

 さらに日が明けたその翌日、これまたランチ終了後の午後のひと時。フェス用メニューの提供時間を計った。店長は従業員たちの休憩を一時間から三十分に休憩時間を減らす。ただし、午後のお客の出足が悪ければ、順次休憩を追加して取らせるつもりでいた。

 問題はアイスを挟む食パンの焼き上がり時間、店長は首をかしげる。少なくとも、出来立てがお客に届くべきだ。ひっきりなしにお客の注文が途切れない場合においての注文であれば、立て続けに作り続けていればいい。それはランチで証明済みだ。しかし、お客は焼きそばパンを頼むかもしれない。

「十人ぐらいにざっと注文を聞いてまわったらどうでしょうか、メニューのプレートを持って」小川が厨房で提案した。彼女は二枚目のアイスパンを頬張る。彼女はピザ釜の前に立って、隣には斜めを上を見て味の表現を探す国見がいる。館山はホールへの通路、段差の前に立つ。

「店先で注文するのが、出店の醍醐味だと思うな、私は」国見が反対意見を言う。どうやら適切な味の正体はわからなかったらしい、思いついたたとえが浮かんだと思われる。不遜の表情が物語った。

「すぐに手元に届くのが良いに決まってる」館山が言った。「待たされるよりはましだって」

「店長は、どう思います?」小川が話を振った。

「限定の個数を決めておこうか。仕込みには時間がかかるからその時までお客を待たせておく。限られた数を提示されたら、お客は並ぶだろう、個数を大幅に超えて。だとすると、こちらは作り続けても、商品を最適な温度と味で提供できる。騙しているかもしれない。だけど、両者にとってはすべからく合理的に働いていると思うよ。食材が切れる・衛生上の問題から、限定した時間内に食材をある場所から運び、消費する時間を決めている。お客にはそういった理由で説明が可能だ。たぶん、売り切れてもお客は求めて詳細を訊きに来るだろうから、教えてあげるんだ、また再開するってね。食材は揃っているし、もしも本当に限定個数で販売するなら、ブーランルージュから最適な冷凍時間を施したパンを仕入れることだって可能だ。配達してもらっても会場まで一時間弱。食パンは指定した個数をフェスの翌日にブーランルージュが一旦釜を休ませる前の最終に焼いてもらい、そこから一晩かけて冷凍して、会場に運ぶ。だけど、二回も食パンを作ってもらうのはあちらの都合もあるからね、一度の焼きと冷凍が現実的だろう」

「すごい……」小川がはっと、呼吸を止めたのを思い出す。彼女は白目を強調、目を見開いてつぶやいた。「いつもながら、感心しますね。店長、社長とかに向いてますよ、たぶんバリバリに働けると思うなぁ」

 店長は小川の関心をさらりと流して返答。「食パンを冷凍保存する発泡スチロールの容器が必要だね。ホームセンターで買っておかないと」

「それは私がお供しますよ。お店のお金で買えるときってわくわくしますもん」

「遊びじゃないんだぞ、安佐」館山が真っ黒の瞳で睨みつける、小川は収縮、風船の空気が抜けたみたいにしぼんだ。隣の国見はやっとパンを平らげた。人によっては食べ進める速度と一口の大きさに顕著な違いが見られた、店長は光景を記録する。

「今週の金曜に出店会議、日曜に必要な備品をそろえる」

「私が同行します」アイスクリームを口角につけた小川が同行を主張した。

「国見さん、日曜は予定ある?」店長はきいた。素っ頓狂な声を国見は発する。

「へっ?私、私ですか?」

「ほかに国見って苗字は僕の知る範疇ではいないと思うけれどね」

「ダメではなくって、はい、ううんと、ええ、行きます。行けますよ」

「無理はしなくていいよ。二度手間を防ぐ目的で第三者の客観的な視点、意見が訊きたい。購入リストの不足、過剰を教えて」

「日曜ですね。空けておきます」

「ずるいですよ、店長。私もどうにかその面白そうな旅に同乗させては貰えませんかね」小川が縋る。

「いや、一人で十分」

「……残念、落選、再選、懸念が無念」