コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

焼きそばの日9-4

「警察への連絡は禁止されています。あの、どうすれば?」

「私に聞かれても。それこそ、あなたは何を懸念しているのか、その辺りが解せません。出店を取りやめることに何かデメリットがあるようには思えませんけど」

「そこなんですよ!」ハイエースに寄りかかる川上は声を張り上げた。前の従業員たちは顔を向けるも、しかし、興味は霧散、薄れて、意識が離れる。

 川上はタバコを取り出した。くしゃくしゃのボックスタイプのたばこを、ポケットから取り出す。店長は、流れるように火を灯す。彼は顎を突き出して、お礼を述べた。

 落ち着いて一服。祈りと同じ、お守りも神頼みもジンクスも、タバコと作用は一緒。

「……出店を取りやめないでいただきたい」顎を引く彼の目線は、じっと地面を這う蟻に焦点が合ってる。ぼやけてこちらの存在は視認すら危うい、目を見て話すという礼儀を持ち合わせていない店長にはこれはとても好都合であった。

「私に打ち明けること自体、疑問に感じます。その行為は常に危険と隣り合わせ、出店の取り止めを私が宣言してからでも内部事情を暴露しても遅くはなかった。リスク軽減の観点からはそちらが妥当な選択に思える。いいえ、確実に」

「失態は無理を承知で避けるべき、次の仕事は回ってきませんからね。大勢のスタッフが関わる仕事場。情報の伝達はまさに高速。失敗は次回の仕事の事実上の喪失を意味する。あなたはまだ若いでしょうからね、家族もいないみたいですし、背に腹は変えられない」

「もしかすると、あなたは偶然を装って今日も私を追いかけて目の前に登場したのでしょうね」店長は短いタバコをつまみ、指先で根元まで吸いきった。茶色いフィルター、吸い口のスポンジが茶色く周囲と同化しようと企む。

 取り繕う微笑の川上。「たまたまですよぉ。今日は」

「今日は?」

「あっつ」彼は口を押さえた。

「しゃべりすぎを意識するべきですね」

 店長は携帯灰皿に吸い殻を収めて、ハイエースに戻った。車の運転は店長の役目であったが、帰りは国見に頼んだ。大型の車の運転に慣れおくべき、体力の消耗を嫌ったのではない、それに彼女から申し出た運転でもある。ブーランルージュから会場まで行きの道のりも彼女は運転を主張したのであった。

「長々と話していましたね」小川が前方の席に身を乗り出して、きいた。

「会場設営の鈍重さについて意見を述べた」

「大きな声を出してました。穏やかな会話っていうのはちょっと難しいですよ、店長」

「内密な話だから、私たちを避けたの」ハンドルを力を込めて握る国見はミラーの位置を調整、車を出す。「店長に話す気があっても、川上さんの態度でそれぐらい察しなさいよ」

「怒らなくてもいいじゃないですか、アイスを買わなかったのまだ根に持ってるなんて、大人気ない。私が最年少なんですからね」