コンテナガレージ

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焼きそばの日10-2

 午後三時。アイスパンの販売を解禁。再び列が作られる。お客が一人倒れて運ばれた。アナウンスでは水分の補給を訴える。サイレンみたいだ。

 午後三時半。国見が焼きそば用のコッペパンを持って戻る、テントまで運んでこちらは一往復で完了。会場スタッフが手伝ってくれたらしいが、その人物は焼きそばパンを並ばずに獲得するためだったようだ。もちろん、何も与えない。感謝の言葉を吐いたあと、なかなか帰ろうとしなかったので、狭い臨時の店内で館山が一喝。そそくさと逃げるようにその人物は尻尾を巻いて退散した。

 午後四時。行列のピーク。光が若干弱まった。観客が走る、有名人のステージが始まるらしい。アルファベット、意味のわからない単語の名前、一応出演順の案内はカウンターに一枚張ってある。特徴的なお客が登場したものその時間帯、アシンメトリーの前髪、しかし、髪は中央できっぱりとピンクと緑に色分け。良く目立つ色合いである。海外のアイスがああいった色合い、カキ氷のグラデーションに似ているかも。

 疲れが従業員を襲う。小川と館山はまだ三十分ほどの休憩しか取っていない。追加の焼きそばパンを運んだ国見に代わりレジを担当した小川は、お客のアイスパンの売り切れに焼きそばパンの販売停止を予想していた。

 焼きそばパンの出方は残り数個のところで極端に減ったが、そこへアイスパンの販売が再開されたため、お客がそちらへ流れる。限定個数を謳いながらも焼きそばパンの供給が間に合って、配達を待つ間の休憩は、もろくも崩れ去っていたのだ。

 現在は、従業員をテント裏の休憩スペースにて交代で休ませている。ただし、店長はそれに加わらない、疲れないのだ、強がりでもなく、揺るがない事実。

 午後四時半。行列が一列に減った夕方前の涼しい風が通り抜ける時間帯に、突如、不穏な空気が襲う。奇抜な髪色の人物がまた列に並んでいるのだ。それだけならば、恐怖は抱かないが、手にはまだ食べかけのアイスパンを持っているのだ。見たところ半分も食べていない、大目に見積もって二口がいいところ。一口でも通用するか。これには会計を担当する国見も気がついていたようだ。目配せ、彼女は何度か無音で意志を知らせてきた。館山はアイスパンを国見に手渡す場面で店長の真後ろを通過する時に不審人物の来訪を投げかける。会計、商品を手渡す、開いた窓の前に国見、右隣に店長が鉄板で焼きそばを炒める。店長の間を二人の従業員で挟むよう館山がさらにその隣でアイスパンをオーブントースターで焼く。

 怪しい人物に順番が回った。不敵な笑み。不審な人物といえば店長に向けた歪み愛情を抱いた数人の事例が過去に散見され、店の従業員はある程度、その不信感を漂わせる人物への対処には通常の店員よりも耐性があった。ただ、奇抜さを要因とする恐怖ならば、かなりの程度相手が発散しているのであまり恐怖を覚えることはないのである。