コンテナガレージ

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焼きそばの日10-5

「……営業停止にはならないんですね。はい、了解しました。いいえ、口論には発展していないようです。お客の一方的な訴えだったようです、これから詳細を聞き取ります。文書での報告ですか?必要ないでしょう。店に並んだお客が一連の状況を観測していたみたいですから、拍手が何よりの証拠です」そのスタッフは駆けつけたもう一名のスタッフに騒ぎの主への聞き取りと拘束を指示し、館山に言った。「営業はこのまま続けてくださって構いませんので」

「ずいぶんとっおおおう、騒がしいっ、そうですねえ、はあああっ」休憩を終えた国見が背伸びをして発声。鉄板に向いた体、顔は下を向き、茶色くソースで変色した焼きそばを捉える。背伸びは彼女の声が接続詞と助詞にかけて詰まり、動詞を発した後にも息が詰まったからである。店長が直接見たわけではない。

 午後六時。アイスが完売御礼。ありがとう。感謝を、買っていない人物に、またはこれから焼きそばパンを購入するお客に知らせる意味を疑問視する、店長。

 従業員たちに休憩を取るよう促して、彼女らを屋外へ追い出した。看板に添えた緊急の文字は、小川が書いたのだろう。NORTH WINDOWというステージがテントの真正面に見える。見えるといっても、ステージに立つ人物は米粒ほどの大きさ、店から概算で約五百メートル。伸ばした腕に親指の爪と女性の平均身長を元にステージまで距離を計測したのだ。

店長も会場内に足を向けた。帽子を買っていてよかったと思う。店長は麦藁帽子を頭に乗せている。日差しはとっくに落ち着き払って平原に沈んでいく。沈み行く太陽は写真を取るのはどうしてだろうか、端末のカメラをこぞって構えるお客たちについて考える。直視が難しいため、とは思わない。日中はあんなに嫌っていたのだから。ずいぶんと意見をころころ変えるものだ。

 テントには一区画ごとに名称が冠されている。案内板を改めて眺めた。誰も見ていない看板。一区画に四店舗、通路に向いて二店舗、出入りの通路を挟んで背中合わせに並ぶという配置だ。背後の空間は駐車と休憩用のテントのスペースである。

 店長たちの区画はアイヌ語を元にした北海道の地名、長万部と言うらしい。店長はまったく名詞に興味がなかった、というよりも覚える必要性を見出せないのだ。名前で覚えるとひずみが生じる、愛情と念がこもるとまでは言わないまでも余計な記憶が生みつけられる、と考えていた。

 テントの場所、会場内における位置関係は大まかに頭に入れた。ほかの施設の目的物を目安に店の位置を把握し歩くごとに書き換え、加える。例えば初めて訪れるデパートであっても、大まかな全体図を頭に浮かべ、必要な箇所のみを歩きながら地図に書き込む。潔く、不要な情報は切り捨てるのだ。

 隣のステージに向かった。こちらはGREENという名称。あまり統一性は見られない。