コンテナガレージ

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ガレットの日3-4

「心底、腹の立つ言い方だな」男性は頑として動かない。

「あなたがもう一人の女性の事実上の上司ですか。腹話術の反対」何を言っているのだろう、腹話術、事実上の上司?館山は釜を盗み見て、視線を二人に戻す。

「間柄の推理、良くできました」男性は手を叩く。「ほら、代金だ。おつりはいらない、とっておけ」カウンターに千円札が音をたてておかれた。

「監視が目的ではないとすると、あなた方は何が目的なのでしょうか?」店長は手を休めずに尋ねた。

「……無知を装ってるのか、本当の馬鹿なかのか。まあいい教えてやるよ。お前の店で売られたランチは数週間遅れて東京のある店に新作のメニューとして売り出され、爆発的なヒットを生んだ。ここはメディアの取材を受けない、掲載も拒否してる。だから、盗む側には好都合。それに系列店を装えば、それこそお客はこぞって店に吸い込まれる、お客はフェスで散々店の味を食べつくした、S市内の中心街に限った店の知名度を利用したんだよ」

「盗作は犯罪ですよ」男性の背後で小川が容器を両手に主張する。

「レシピに著作権は発生しない。あまたの料理人がレシピを元にアレンジ、創作を加えたのが、巷に溢れる料理本の数々だ。店の料理も同様だ。じゃあ何か、プリンはその権利を持つ企業や人物だけが作れるのか?」

「はぐらかさないで。あなたは、うちの料理を、店長の料理をそのままパクってるだけでしょう」

「参考にしている、といってくれないか」

「解せない」店長は小川から容器を受けるために、手を伸ばす。間の男性の存在は無いものとして捉えているようだった。まずい、館山はピザ釜から生地を取り出す、セーフ。ちょうど焼きあがる、焦げ目がつく、いい具合だった。

「ガレットを食べたいがため、利益の正体、源をあえて打ち明けた。いくらでも食べられるはずだ、真新しいスーツを着たお客が手渡してくれる」国見があくせく対応する列の中に、館山は指摘されたスーツの人物を見つけた。確かに、スーツが日に焼けていないし、ネクタイもよれていない、そもそも正午まで働いていた人がお昼を買いに訪れる、綺麗なスーツの人物は見た目こそ他の人と遜色ないにしても、蓄積された疲労感は漂っていなかった。店長が外を見ていた様子はなかったはずだ、予測したのだろうか。館山は容器に薄手の紙に包むガレットを移す、店長が絶対に気づかない角度で見守った。

 いちゃもんをつける男性は鼻を鳴らした。「わかっていませんね。オーナーともあろう人が飲食業界の事情に疎くて、生き残れると、ああ、あなたは思っているのでした」

「お話はそれだけですか?」淡々と店長は言い、一言言いたげな小川に料理を運ぶように指示。国見が屋外で小川の帰りを待って、入り口を眺めていた。出入り口はすりガラスで外から中の様子が、はっきりとは見えないように造られている。