コンテナガレージ

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ガレットの日4-1

 自称フランス料理推進促進協会の田所誠二は、店長に引き抜きを持ちかけ、店内を眺めた数分後にカウンターの千円札を回収し、店を去った。

 後日ハンバーガー用のパンを受け取りに行った小川が、田所誠二と真柴ルイの二人組みがブーランルージュにも姿を見せたと、収集した証言を語った。また、協会を名乗る二人が現れたその週に店長を除く従業員三名は休憩時間にそれぞれ訪れる喫茶店、カフェにてその店の店員及び店長からおかしな二人組みの存在を尋ねられた。

 記憶を振り返り、持ち帰って情報を精査するまでもなく、彼女たち従業員は自分たちに投げかけられる質問を疑問に感じていた。それは自分たちの店はフランス料理をまったく作らないことに由来、しかも外観は以前のオーナーの意志を受け継ぐようなイタリア料理を思わせる。一度のガレットにしては、浸透率が高い。情報がばら撒かれたのかもしれない。水面下でうごめき、気づいた時にはもう手遅れ、飲み込まれるのを待つのみ、という大いなる流れがにわかに感じ取れた。それでも目に映るのは局所的な点に過ぎず、見過ごすしか方法はなかった。

 週末、店長は東京へ飛んだ。田所誠二が発した当該店の調査である。飛行機に飛び乗り、もちろん早朝便で一路東京へ。午前、まだ日が昇りきらない時刻に店の外観を通りから眺め、食事をし、店を出た。帰りは午後の第一便に乗れた。比較的、空いている時間帯のフライトを選んだのが正解、三席の両隣は空席で事実上一人の至上の空間だった。

 店長は機内のシートにもたれる。数時間前の模倣された店内を回想していた。三色のタイル、白・赤・青。正方形の中に四十五度傾くタイルに三色の一つが塗られていた。店は、通りの角に面して、カウンターは擦り切れたアンティークの重厚さを醸し、店内のテーブルと椅子は比較的年代の新しい家具だった。

 天井からぶら下がるシャンデリアは白いペンキを塗りたくった質感、半透明のろうそく型のフードをかぶせたLEDの照明。

 残念というよりも、店の雰囲気を似せていることは頷けた。しかし、完璧な模倣とも思えない。店は中程度の経済都市のカフェ。現にメニューがテーブルに運ばれるまでに五、六人が店を出入り。カップを手に持って颯爽、町に繰り出す。

 大学生が多かった、近くに大学があると思われる、ユニバーシティーの文字が一人の背中に斜めに刻印されていた。もう、海外の模倣はやめたのではなかったのか、まだ大学では憧れを引きずっているらしい。ステータスなのかもしれない、特定に属する安心感を味わっているのだ。

 店では焼きそばパンとアイスパンを注文し、先に運ばれた焼きそばパンを口にした。味はまったく異なる。しかし、雰囲気と風貌、パンの形状と柔らかさは似通っている。焼きそばの味はあえて変えているように思えた。そして、アイスパン。フェスで出したアイスは甘みを抑えたタイプという注文をして業者に発注していた。甘さが強いとデザートとしての印象が強く残るからだ。あくまでお腹を満たしつつ、体温を下げることが目的であった。

 冷凍の食パンに焼き色をつける程度の外側とアイスとまだ冷えている食パンの内側をフェスにて体現したが、模倣店のアイスパンは外をしっかり焼いてしまい、完全にパンの口をふさいでプレスしていた。食べるたびに溶けたアイスが溢れて、これでは皿が必要なのも頷ける、アイスパンはテイクアウトの表示はメニューに載っていない。