コンテナガレージ

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ガレットの日5-4

「応えれば、教えてくれますね?」国見は攻撃に転じた、既に相手は私の態度で補う言葉を待つばかりだ。国見は臨機応変に態度を変える、彼らには守秘義務がある。意味もなく店長に私の想いを伝えることはないだろう。

「ええ、もちろん、そのつもりです」切れ長の目が瞬いた、種田の即答である。頭がいい証拠、捨てているからだ、とても身軽。

「刑事さんの発言を全面的に肯定します、これでいいですか」

「はい、ご協力感謝します」種田は事務的に応えた。

「川上謙二は、個人的にあなたが勤める店を監視、調査していた、というのが最初の見解でした」今度は鈴木が話す。どこに会話のバトン、受け渡しのスイッチがあるのか、国見が疑うほどにスムーズだった。「しかし、あまりにも手帳の記録が広範囲にわたっていた」

「広範囲?」

「店を含めた建物全体です。お店はビルに挟まれて建っている、立地としても地下鉄の駅はものの一分で地下通路に降りられる。しかも、裏に通じる敷地にも多少の余裕がある、手帳にはどこで手に入れたのか、店の図面が見つかりました。たぶん、川上は店長を通じて店を買い取り、取り壊して別の建物、それこそビルを建てようと画策していたのではないのかという見方です」

「商業地の価値は十分に高いです。しかし、日当たりは良くありませんし、店長は店を借りているのではなく、所有しています。賃貸の物件ならば、契約期間満了に伴って店長から所有者にそして狙っている川上さんの手に渡る、そういった構図なら描けます。ただやっぱり、店は所有物件であり、しかも店は営業を続ける。私が言うものはばかられますが、お客はかなりついていますよ。あの、私に聞いてもなにも出てきませんけれど」

「川上謙二とそちらの店長について、不振な事柄を見かけた、あるいは個人的な連絡のやりとりなどは、ご存知ありませんか?」種田が尋ねた。その間、鈴木はコーヒーを啜る。