コンテナガレージ

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ガレットの日5-6

 しゃべりすぎただろうか、自分でも気がつかなかったが、店長についての問いかけに溢れるように言葉が出てしまう。控えよう。どうしてだ?国見は温くなったコーヒーを傾けて、飲み干した。本と伝票を掴めば、帰る意思が伝わる。

「焼きそば協会に彼は属していた」種田が呟くように言った。「聞き慣れない協会名ですが、そういった組織は存在するようです。調べによると焼きそばの普及促進及び更なる焼きそばの進化がコンセプト、スーロガン、組織の意志」

「本職を持っている人たちが集まった組織みたいで、規模はかなり小さい」鈴木が付け加えた。

「そういえばこの間フランス料理の似たような協会の人が尋ねてきました」

「フランス料理ですか?」鈴木が眉を上げて訊いた。

「フランス料理をお客に提供するには彼らの協会の許可が必要だと、正式にフランス政府の認可を得ている、彼らの協会の了承なしに警告を破った提供には今後店におけるフランス料理の提供が禁じられるそうです」

「はは、冗談みたいな話だ」

「ええ、私もそう思います」

「鈴木さん、調べてみます」

「本気か?怪しげな協会の繋がりっていうほっそい線だけだぞ」

「いいえ、国見さんの勤め先という繋がりがあります。関係者は口裏を合わせたような川上謙二の証言ばかり。背後に隠れているものをあぶりだすにはなりふりは構っていられない」

「らしくないな」

 種田が伝票を掴んで立ち上がった。すかさず国見も立ち上がる。おごられるわけにはいかない、借りを作るのはごめんだ。

 カフェを出て、一階の入り口で刑事たちと別れた。

 店に戻る道で小川とすれ違う。互いに速度を落とすことなく、交差、行き先は聞かなかった、私であったら訊いて欲しくはないからだ、これから何をしようか、そう考えている時かもしれないのだ、彼女はそう思いはかり、信号を待つ時間に苛立ちを覚える通行人の後ろについて青を待った。