コンテナガレージ

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ガレットの日6-2

「無視かぁ」

「いいえ、聞こえてます」

「だったら返事ぐらいしてくれよ、一人ごとをしゃべってるおかしい奴だと思われる」

「独り言は二人では話せない。よって、おかしく思われることが前提になります」

「屁理屈ばっかり言って。言葉の綾だろう?」

「でしたら、私への問いかけも言葉の綾、会話の妙、日本独特の間と捉えてください。平等に考えていただけるなら」

 鈴木が口を開く前に、次の訪問相手、小川安佐が後方を振り返りつつ、通行人にぶつかる。謝り、怪訝な表情をやり過ごして、二人の前を通過。全身、それから上半身はそのスピードを残して状態は片方の足を前に欲しがる。驚く小川、顔のパーツが広がった。

 咄嗟に種田は声をかけた、強めに音声が出てしまう。「待って、待ちなさい!」

 しかし、小川安佐は止まりかけた体に再び、許可を申請。前を向き、一度後方を振り返った。種田が足を一歩踏み出しかけた時である。

「話がある」信号待ちの通行人が数人、声に反応して振り向いたり、顔を向けたりした。立ち止まっているだけで、端末をいじっている様子にも、その光景を滑稽さ、無駄な暇つぶし、欠落した嗜好、生きるだけ、食べるだけ、生理現象と快楽のみの追求に超然と特化した人物たちの視線はまったく種田へは行動を阻害する威力はもたない。

 小川が走り去る。

 視界の左端、角、書店、扉の先、小川が走って登場した道から人が一歩踏み出て、翻すように身を隠した。

 躊躇い。鈴木は何事かとタバコをくわえたままだった。ただ、彼女の機敏な動作は感じている。

「七時の方角、たぶん男、私たちを見かけて方向を変えました、追ってください」種田は走り出した、小川安佐が目の前を通過して二秒後の出来事。

「おいっ、種田!」

「事件の手がかかり、頼みました」背後で鈴木の呼びかけ。しかし、種田は小川の追跡に行動を優先させた。

 突き当たりは南北に通りが続く、小川安佐は直進する。ひたすら前進あるのみか。種田も運動の能力はかなり高い。警察では幾つか強制的に武道の稽古がある。研修や新人の時に必修で取り組んでいた。彼女は学生時代、運動部からひっきりなしに誘われた経歴を持つ。余りある能力は誘われないようにあえて隠していたぐらいだ。