コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

今日は何の日?2-3

「これで何グラム?」

「二百」

「これをもう一つください」

 おつりと領収書を財布にしまう時、主人が何気に質問した。

「あんたも、フランス協会とかいう団体の一員か?」

 店長は顔を上げて応えた。「いいえ、洋食は作りますど、フランス料理はあまりというかほとんど作りませんので。あの、失礼ですが、なぜフラン料理促進普及協会のことをご存知で?」店長は正式な名称であえて答えた。

「そこら中に貼ってあるだろう」主人が指した方角に店長は視線を向けた。電柱と市場の向かいの民家、勝手口のドアにも協会の名前が書かれたステッカーが貼ってある。

「いつからですか?」

「つい最近だな、一ヶ月前か。ほら、I市の港湾沿いでお祭りのようなことをやって人を毎年集めるだろう、あれの時に合わせて急に増えた」主人が声を潜める。「ここだけの話、両隣の店も取り込まれてる」

「それはどういう意味でしょうか?」

「お隣さんたちが生ものの販売が主流だったのに、保存に適した加工品の製造に乗り出した」より一層声が小さくなる。軽自動車が行き過ぎて、会話が再開。

「生産者と販売を兼ねているのなら、妥当な手法だと思います」店長は忌憚のない意見をぶつけた。かかとは帰ろうともう片方のつま先につつかれているのに、体、上半身、命令を出す頭脳は頑なにやり取りを続ける。

「フランス料理に使われる食材の取り扱いを始めても、そう言い切れるか?」

「なるほど」店長は頷く。「協会がなじみの薄い食材の取り扱いに手を広げると、世間の認知は高まり、しかも通販を行わないのなら、直接市場まで足を運ばなくてならない。ついでに他の商品も手に取り、相乗効果が期待できる」

「ご明察」指が鳴った。

「先ほど、ソラマメとスナップエンドウを買った八百屋ですが……」

「そこは心配ない。誰も近寄らない店だ。店を開けても一般客にあれこれ、文句を言って追い返す。売るのはあんたみたいに認められたお客だけ。懇意にしてる業者への卸し業が専門、店の開けるのはばあさんのボケ防止なんだよ」