コンテナガレージ

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今日は何の日?3-3

「その辺りは中学校の近くだったな、公園があったはずだ」田村は腕に黒いカバーをとりつけていた、ワイシャツの汚れを回避するためだと種田は考える。長年使っているのか、黒が色あせて薄く灰色がかっていた。地図を取り出して彼は指先を舐める、A四版の地図、当該地域を捲りあて、見やすいように向きを変えて種田に見せた。背の高い彼女は若干かがんで地図に見入る。

「ここですかな、刑事さんが言われた場所は?」種田は記憶を辿って家の数を大きな通りを逸れた地点から数える。

「はい、間違いありません」

「残念ながら、うちの担当物件ではないですなあ、お嬢さん」

「柏木さんはさくら不動産から購入したとおっしゃってましたが」種田は顔を上げる。そこには白い額の刻まれた皺に輪をかけてくっきり錐で掘り込んだような溝が生まれている。田村はループタイを引き上げて調節、外は日が陰って寒さが襲った、彼は灰色のジャケットを羽織る。