コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

今日は何の日?3-4

「あそこは三つの敷地が混在した土地でして、建物を建てた以前のオーナーは徴収する賃貸料を三等分することによって、互いの権利、主張を収めていたのですよ。建設に踏み切ったのは、互いにその土地をもてあまし、土地を遊ばせては無駄だという共通理解があった。その中で、もっとも土地所有の面積の保有する前オーナーが建造の資金をすべてまかない、建物の諸経費を引いた家賃収入を三人で分け合っていた。しかしある時、二人の土地所有者に断りもなく、建物を柏木さんに売却したらしくて、土地の権利の一部分を柏木さんが所有し、他の二人の土地所有者が同時に収入の途絶えた土地を権利者である、複雑な状況を生み出したとまあ、そういうことでね、私は一切関わり合いから身を引いたのですよ、面倒はこの歳ではもうもう、ごめんですから」

「建設に関して土地所有の二人と書類上の契約は結ばれなかったのでしょうか?」種田は長々とした解説の疑問点を的確につく。

「まあ、そこに行き着くでしょうね。口約束だったのですよ、それに三等分の家賃は毎月きちんと支払われていた、当然疑うこともありません。住まいは互いに近所、顔を合わせることもあったのですから、まさか勝手に建物を売るとは夢に思わなかった、それがお二人の内実ですかね。しかし、入り組んだ土地管理の計測は、三十年以上も前の計測で、三人の土地所有を示した図面を拝見しましたら、三枚とも三方を囲まれた土地に伸びる土地の形状がすべて異なって、互いの土地を侵食してる部分もあります。測量の精度に差が出たのか、そもそもの図り方が間違っていたのか、建物が建つまでその土地に建物が建たなかった理由がそこにあるのです」

「つまり、柏木さんの所有する家の三方に、以前の所有者がいるとことですね」

「それが、引っ越しました」田村は肩を大げさに竦めた。ようやく種田に彼は席を勧めた。

「引っ越し先は?」

 田村は力なく首を真横に振った。反動で首が小刻みに揺れる。「権利を売り払った時の契約書に書かれた住所は以前の住まい、道路から見た建物の右隣の家です。こちらは他の不動産業者に売却を求めたようですね」

「どちらの会社か見当はつきますか?」

「無駄ですよ」田村はため息混じりに言った。「私も調べてましたから、住所は権利を売り払った柏木さんが住む建物の住所でした」

「売った土地の住所を書いても認められるのですか、契約上の不履行だと思います」

「売り主の住まいまで不動産業者は気に留めませんよ、問題は契約を交わす建物です」

「隣の家は既に買い手が見つかってますか?」

「ええ、たぶん。このあたりは人気の土地ですし、数ヶ月前に電柱の張り紙を見かけていましたので、もうとっくに買い手は見つかっているでしょう」田村は席を立って、奥の給湯室の、薬缶の火を止める。「座ってください、お茶でも出しますから」

 種田の端末が震えた。

「はい。ええ、わかりました。通りで、はい」素早く立ち上がる。種田は断りを入れて、相手の返答を待たずに引き戸を開けた。「すいません、失礼します」

「お気をつけてなあ」