コンテナガレージ

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今日は何の日?5-2

「普通はさぁ、清廉潔白な面を訪問者とか外部の人間に見せるよね?いいところですって、協会への入会を促すために。しかし、協会に行き着いてみると一般市民の家で、しかもその土地は複雑な利権が絡んでる。調査と訴えを待ち構えた作戦ってことだな、種田の見解は」鈴木は、動き出した車を感じ取って座り直す。車間距離を一定に保って、車を再び、流れに乗せた。語尾をつめた鈴木の口調が戻ったようだ。

「すべてはフランス料理促進普及協会に行き着きます」

「フルネームで言う必要ある?」

「フランス料理協会というのが存在します。そちらとの混同を避けるための配慮。騒動の渦中にある協会のために言っているのではありません」

「そっちが正式な協会みたいだな。名前からして」

「ええ、星を持つフランス料理店の店長、オーナー、料理人たちで構成された組織、発足は一九七〇年代」

「いつも思うんだけどさ、良く覚えているよな、そういう細かい数字」

「覚えているのではありません。記憶を引き出している。鈴木さんも覚えてはいます。ですが、引き出す作業を怠っているのです」

「引っ張り出そうとはしてるんだよ、これでもね」

「行動や思考が単純になれば、そこから物事の取り出しが可能になる」

「だけど、俗に言う天才って奴はいろんなことを知って、様々な分野、系統に手を広げるだろう、有名なのだと数学とか、絵画とか、科学とか、天文学とかに」

「そのつど、思考回路を変えているのです。服を着替えるように、靴を履きかえるように、使用するからだは同じでも外側、つまり捉える形、形状を変えれば、寒く感じたり、反対に暑くも感じられたりする」

「種田もその一種を利用してるってこと?」

「私の場合は容量不足です。極端な二種類つまり、現実と非現実のみがマッピングされている。幼少期にこの事実に気がつけば、バリエーションは増やせたと思います」

「家庭が厳しかったのかぁ」鈴木は同情を込めて呟いたが、誤りなので彼女は訂正する。

「いいえ、厳格ではありましたが、一定に偏って固定されていたので、対象は容易く処理できました」

「そう。僕には理解できないな、親の言うことは絶対だったからね。反発なんて、もってのほか」

「だから、鈴木さんが形成された」

「まあ、反論はしないよ」

 流れが緩和された通りを鈴木はナビの力に頼らず、走行を続けた。種田は到着地を数百メートル手前の助手席から見つけた。銀色のフォルム、外壁は艶めいた質感が特徴的だった。通り沿い、細い路地に幹線道路を逸れて、到着場所に設けてある駐車場に。

 鈴木は、車を止めた。