コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

今日は何の日?5-5

「協会、フランス料理促進普及協会に存在を認識された、あるいは最近耳にしたことはありますかね」

「そういえば、思い出しましたよ」義堂は持ち上げたカップを置いた。「広告が貼られてました。スタジオ前の電柱に。すぐに剥がしたんだ。家内はいたるところに協会勧誘の広告を見たといってたかな」夫人はコーヒーを運んですぐに席を離れて二階に消えていた。

「柏木さんの仕事場が協会の事務所にも登録されています」

「それは初耳です」義堂はコーヒーを飲む。「うちの協会を取り仕切るのは僕じゃない、まだ新参者だし、仕事の割り振りだって期待してここにスタジオを構えたのではありませんから、境界との繋がりは薄い。僕の後に柏木さんが協会に入って、それで何度か彼女から協会についての相談を受けました。しかし、事務所を構えて間もない頃でここ数ヶ月は連絡を取り合ってなかったかな。三月に卒業式の写真を私も数件個人的な依頼を受けていまして、学校で彼女の顔を見かけたのが最後だと」

「個人的なお付き合いはなかったと?」種田ははっきりと発言する。隣の鈴木が慌てる表情の変化を視界の端で確認できた。

「疑いますよね。まあ、相対的に見て若くて綺麗な女性です」

「そういった発言は、人権侵害にあたります」

「聞かれたの、言ったまで。あえて口にするようことはしていません。家内もいますしね、いなくてもですが」

「柏木さんは姿を消しました、これはオフレコでお願いしますが、私たちの監視の目を潜り抜けてです」と種田。

「警察には見られたくない用事があるのでしょう」笑いながら義堂はカップを傾ける。

「具体的には?」

「それを考えるのがあなた方の仕事」

「よく言われます、そのフレーズも」

「偏屈さを装ったと思われましたね?」

「いいえ、偏屈に傾いた考えというラインで物事を考えた、というアピールを指摘したのです」

「面白い。あなたは警察をすぐにでもやめるべきだ」

「あの、質問からどんどん話題がずれているのですが……」鈴木が困惑気味に種田と義堂のやり取りを止める。そこで、二階から声がかかった。

「準備が整いました。次の撮影に入れますぅ」女性の声、先ほどの義堂婦人と思われる。義堂は腰を上げて、一言。

「フランス料理の協会と私は無関係、柏木さんとも仕事の付き合い、カメラ協会に関する事柄しか知りえません。疑うなら調べてもらっても結構です、何も出ませんから」

「柏木さんは車を所有してましたか?」種田は右足を踏み出す義堂に訊いた。

「ああ、バイクなら持ってます。駅前の駐輪場に停めているはずですね、中型の古い国産車です」