コンテナガレージ

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今日は何の日?6-1

「館山さん、休憩だよ」

「店長、あの人大丈夫ですか、いざとなったら力ずくで追い出す覚悟も必要ですけれど」

「どうにかなるよ。ずっと座ってもいられない」

 館山はランチの営業時間ぎりぎりまで滞在をもくろむ真柴ルイへの不信感を募らせるも、店長のあまりにも気のない一言に背中を押されて、休憩に入った。店内で最初に休憩に入るのは決まって彼女が最初である。特に決まりはないが、店長から厨房の従業員・小川よりも先に入るようとは一応言われていた。緊急時の対策として、経験豊富な彼女をディナー時間前置いておきたい、という考えだろう。

 真柴ルイ、あの人はもしかすると店長に近づきたいがために何かと理由をつけて店に顔を出し、店長と接触を企てているのかも、館山はパーカーのポケットに手を入れて、どんよりした空の下、ビルと人ごみの間を歩いた。いつもなら食材を買い込み、研究と説明して釜の横で料理を作るのであるが、もう給料は残り後わずか、食材を買う余裕がない、館山であった。

 駅前通りに出て、店からも見える位置、角のファストフード店に入ろうとしたが、押しつぶす店の雰囲気、無秩序に入り組んだ異世界を体が拒否した。館山は地下へと降りるため、四丁目の交差点の階段を下った。人ごみを避けたい時に訪れる地下の喫茶店まで、肌寒さを感じる通路を最短距離で歩き、下を向いて、人を避けるように目的の場所へ。

 寒いとは感じつつ、アイスコーヒーを注文する。垂直の背もたれも心地よく感じてしまうこの空間のなんともいえない、様式美。価格やブランド力や素材とはこういった機能美を学んでから手を出すべきだろう。それでも私は欲しいとは思えないな……、館山は独り言を声に出さずに呟いた。

 コーヒーがテーブルに置かれた時には、うつらうつら、眠気に襲われていた。

 疲れているのかもしれない。思い返すと家に帰っても料理のことばかりを考えていたっけ。彼女は振り返る。ストローをグラス、液体に差し込んで吸い込む。だけど、かなり心地いい。無駄なことを考えていない分、悲観に駆られない。現在位置の把握すら、正確ではないのに。だが、前だけ目的にのみ人生を傾ける。店を辞めた人はどんどん結婚に走る。だけれども館山はなびかない。店長がいるからだろうか、いいや、それだけが要因とは思えないはず。確たる目標のため、それをいつか体現できる日を目指している。ただし、まだまだ。まずは店長に認めてもらわなくては。最難関のハードルかも。

 視線を感じた、背中にピリッと電気が走る。料理を作り続けて一つ学んだことは意識を通わせれば、未熟でも相手を捕らえることが可能と知れた。人ごみではこの感覚はしまい込んでいる。目立ちすぎるし、すべての感度を拾ってしまうので、体がその反応に負けて家までエネルギーが持たないのだ。時に彼女は偶然に力の抜けた状態において、特定の電波を拾ってしまう。それはだけれど無関係な人物ではなく、こちらとあちらの共通の下に成立する。