コンテナガレージ

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今日は何の日?8-4

「首は一週間ほどで、手首は三週間です」

「心配しなくても、給料は支払うから。レジの仕事ならできるだろうし、少ない人数でも仕込みの時間を利用すれば、短時間でお客の来店が見込めるランチのテイクアウトの提供量を増やす。品数もだ」

「すいません、私が、浅はかでした……」

「何を言っているのかな?」店長は無表情で話した。腕をまくる。「通常とは、本来はありえない概念だ。今日が昨日の続きだなんて幻想は捨てるべき。ゆっくりと移り変わる季節だからね、錯覚してしまうんだ。季節の代わり目はめまぐるしくて、暑かったり寒かったりする、それがいわゆる通常という現象だと僕は思っているね。怒りを隠しているのでもないよ、やさしさでもない。定常が移り変わったんだ急激に。だから、対処をする」

「怒っては、叱ってはくれないんですね、私には」悲壮な声が館山から漏れだした。彼女もそれをわかっているが、止まらない。小川と国見は無言だった。二人の姿は見えていない館山である。

「叱る?どうして、店に迷惑をかけたから、それとも仕事に穴を開けたから?どちらもまったくの見当違い。僕は君たちを完璧だとは思っていない。僕も含めて欠損は予測の範囲内だ。店をメディアに紹介しないのは、不定期の営業スタイルを維持するためという側面もある。お客はこの通りを普段から、店の前を通る人物をターゲットにしている。つまり、雨の日に傘を差すように、ランチをテイクアウトから店内での飲食に咄嗟に変更する、そうすれば、お客が状況に合わせて店を訪れるようなる。開いてるかもしれない、もしかすると開いていないかも、開いていたら入ってみればいい」

「迷惑をかけてることは事実です」

「その話題は僕の中では消化された。昨日の時点で」

「では、昨日謝っていたら、叱ってくれましたか?」

「館山さんは何を求めているの?」

「……自分でもよくわかりません」

「不明確であることが、明確じゃないのかな」店長は言う。「おそらく僕は君の意見には応えられない。何を言っているのか、は理解できると思う。はっきりと明言はしない。ここは仕事場だ。僕は個人の気持ちが自由とまで、許可を与えたつもりはない。個人的な付き合いを控えるのは、そのためさ」

「すべて、指示は、指導は、手技として、私は、応えてきたつもりです!」

「君は未来を見ているつもりでも、余計な欲を垣間見ているね。二つを同時に、あわよくば得ようとしている」

「応えてくれないからです、店長が」

「僕に近づくための料理か、料理を体得した道に佇む僕であるのか。二つは似ているけれどもまったく異なる。後者は僕のことが見えていないだろう、気がつかない間に手に入っていた、それぐらいの感覚。前者は反対に料理を見ていない。君は何をもってここにいるのかをもう一度考え直すべきだ、今すぐにね。だけど、僕は君じゃない、きっかけにはなりえても、僕は君ではないんだ」

 

小説の1話目は、こちら。

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