コンテナガレージ

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今日は何の日?9-1

 夕方、館山リルカから約三週間の療養期間を要すると説明を受けた店長は、営業をランチのみの体制に変更すると決めた。人員の補充を店長はまったく考えていない。ホール係の国見蘭はピークタイムだけでもディナーの営業を訴えたが、取り合わない店長である。

 厨房の小川安佐は肥大する仕事をこなすためのシミュレートを、ぶつぶつと独り言を呟いて、考えていた。迷っているのは、接客担当の国見のみ。二対一。館山リルカを入れれば三対一である。

 店の明かりに引き寄せられ、お客が看板に逆らいドアを開けること四回目、国見はそのたびに話が遮られるのを嫌って、入り口の前に黒板を置き、本日閉店の文字を大々的にお客にわからせた。

「ランチを重点的に狙うのは理解できます。ただですね、接客はほぼ私一人にかかっています。館山さんが会計を担当するにしても、彼女は安佐のようにまだ接客には不慣れ。慣れたとして、ランチの量と種類を増やしても、私たちの応対のスピードは上げられません」ドアを閉めた国見は通路に立って厨房の店長に訴えた。

「この前の緊急事態のように、店の前に無秩序に並んだお客を裁いた対応を応用する」店長はハンバーグ用のひき肉をこねて、応えた。

「中と外の対応を分けるんですか?」ピザ釜で明日に向けた生地の焼き加減、釜の温度管理を確かめ、試す、汗だくの小川が二人の会話に参戦する。彼女は飲料水を片手に先ほどからせっせと仕込んだ生地を焼いている。まだ、ピザを明日のメニューに決めてはいないが、小川はランチが終わると我先に生地をこねていたのだった、彼女なりに行き着いた対処である。

「提供時間の長いメニューは中で、短時間の提供なら外で待ってもらう。そのためには、列に並ぶ客に前もって選択するメニューとその選択方法を一々説明しなくてはならない。システムをいち早く理解してくれるお客ばかりとは限らないからね。二人の意見を聞きたい」

「ランチを行う前提ってことでよろしいんですか、店長」国見は尋ねた。

「店は閉めない、そして館山さんの代わりは雇わない。この二つの約束事を守るためには、長時間の営業は不向き。館山さんの傷が完治して復帰するのが三週間と仮定しよう。日曜日は休日。十八日を乗り切りっても、翌日、翌週も営業は行われる。乗り切れるとは思うよ。しかし、長い目で見ると僕らの誰かが倒れる確率も高まってしまう。長期的な展望、固定客を持つのは重要であるが、この店にはバックアップに対応する人材がいない。長期の休暇も提供していない状況で体力の低下、疲労を溜め込むのは避けておきたい。だから、君たちにはディナーを諦めてもらう。止めるのではない、休むんだ」