コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

巻き寿司の日1-3

 ドアは簡単に開く。引っ掛かりもない。声をかけて、ドアを開ける。

 そっと、伺いながら足を進める、光を遮断したために室内はブラインドからかすかに光が漏れていた。種田は椅子に座る人物を目にする。

「すみません、警察です」反応は返ってこない、種田の予感は必ずといっていいほど、的中する。

 足元まで近づいた。店内、テーブルの椅子に女性が座る。足を開いた下半身になまめかしさがまだ感じられた、目は閉じている、意識は完全に途切れ、一生回復の兆しはない。種田は脈を図る、ここで予感が確信に変わった。店内をざっと見渡す。席数は十席、表に二席でそれぞれ二人ずつだから、最大で二十四人が収容、とはいっても込み合うような、店先にお客をずっと並べて次々と待つような店構えには見えない、どちらかといえば単価の高い料理を時間をかけて提供、楽しませる店と推測する。

 オープンキッチン。客席から調理工程を愉しむキッチンであった。テナント料はかなり高額だろう。駅からは数分の立地である。優雅な食事を楽しむ層に向けたのであれば、妥当なのかもしれない。店の詮索を終えた種田は、死体と向き合った。

 腕は両方とも垂れている、口は若干開き気味、真っ白く大きめのジャケットに短いパンツ、アンバランスさで足元の長さを強調したものと見える。種田とは無縁の服装。

 上着を調べる、内ポケットに分厚い財布が忍ばせてあった。氏名、真柴ルイとある。免許証に重なってフランス料理促進普及協会副会長と書かれた名刺が見つかった。ここで繋がるのか、種田は川上謙二からはじまる事件の核心に迫ったと手ごたえを感じた。これで上層部へ捜査の継続を要請できる、手がかりを提示すれば、事件の重要性を認識するだろう。

 眠ったような表情だ。外傷は見られない、あまり動かすべきではないので、種田は接触を最小限に抑えた。持ち物は端末と財布のみ。男性のような財布の使い方、ただ、バッグが持ち去られたと仮定しても、財布をあえて差し込むとは思えない。名詞を一枚忘れたように、忍ばせておけば死体の身元発覚に事足りる。つまり、財布は被害者自らジャケットに仕舞っていた、と考えられる。しかし、あくまでも予測だ、予感ではなく。

 とりあえず、鈴木には連絡を入れておくのが先決と判断。種田はまだ眠っていないことを祈って端末を取り出した。

「寝ているところを申し訳ありません、報告があります」

「寝てないよ、まだ。車だ。ちょっと待て」鈴木は走行を止めたようだ、種田は返答を待つ。「もしもし、現場に入れない熊田さんなら一度帰れって言うからね、何度頼んでもそこに居続けることは許可できないよ」

「死体を発見しました。事故現場の真向かいのフランス料理店です」

「勝手に調べたの!?」驚いた鈴木の声が掠れる。