コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

巻き寿司の日4-1

 通話が切れた。しかし、こちらの声を聞いて相手は返答をしていた。わざわざしゃべった意味は、発覚を演出するためだろうか、種田は端末の番号を調べるよう、鈴木に躊躇なく依頼する。

「次の番号の現在地を追ってください」

「死体の端末?」鈴木は言う。

「いいえ、死体にかかってきた番号です」

「出たの?」

「いけませんか?相手が犯人、つまり殺害を企てたものならば端末にはかけてくるはずがありません」

「それはそうだけど、S市の管轄だっていうのを、本当に理解してる?どうやって説明するの、死体の端末に勝手に出たってさあ」呆れてものも言えない、鈴木の表情が浮かんだ。

「端末の番号を追ってから考えます」

「知らないからね、僕は無関係だから」

「すべての責任は私が追いますので」

「はあ、熊田さんになんていおう」

「お願いします、では」

 種田は室内を再度調べ始めた、田所の居場所が知らされるまでの時間を有効に使う。外はまだ騒がしい、店内に外部の喧騒が伝わってくる。今日は事故現場の徹底的な検分が行われるはず、まだ交通の規制は続き、一方通行の駅前通りに入る車は遠回りのルートを構築しなくては、目的地にたどり着かないだろう。俯瞰で見た上空からの映像が求められるというもの。

 陰気な室内に思えるが、それは死体と照度の低さのためだ。フランス料理促進普及協会の会員番号が書かれた会員証が質素な額に入り、壁に飾られている。それに絵画も一枚。

 種田は絵に釘付けになった。

 死体を避けて、壁に近づく。

 数センチの距離で食い入るように見入る。

 同じだ、絵と死体が一致している。厨房が途切れ、椅子に寄りかかる死体は右の端に位置し、左の空間はテーブルと壁。ただ、絵画は飾られていない。この状況の不可解さを演出したようにも思える、あざとさを種田は感じた。当然に警察は室内を調べる、絵画の見落としは考えられない。絵になぞらえた殺人、つまりフランス料理促進普及協会の印象を強めるつもりなのだろう。最初から反対勢力を作り出し、そこから希望者、共感を持った人物を集める手法。