コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

巻き寿司の日4-2

 種田は、絵画と死体に見切りをつけた。手元の端末を耳にあてる。

「はい」

「四丁目のピザ釜が目印のレストランだ、プラザビルの向い」

「わかりました」

「忠告だけど、そろそろ手を引くつもりはないの?」

「このままではおそらく処分は確定でしょう。ただし、それなりの成果、犯人逮捕や死体に関する情報を提供すれば、交換条件としては妥当、天秤は水平に保たれる。失礼します」

 種田は裏口からそっと外に出た。やはり、内側から扉を開けるときにカードキーは必要なかった。駅前通りの人ごみはまた一段と活気を増している、種田は細い通路から確認して、店の裏手から隣の道に移動した。肩に付着した植物の白い綿、種を払って、通りに出た。

 三丁目に差し掛かり、種田は信号が変わるのを待った。左右に伸びる通りはかなりの交通量で、時差式の信号が採用されている。左右の信号が止まる。そして、右左折待機の車を移動させて、歩行者側のみが青に変わった。

 北上する先頭の待機車両にバイクがまぎれている。種田は注視、歩道を渡りながらその車両に意識を這わせた。年式の古いバイク、そして記憶に新しい柏木未来の背格好。二つの条件が重なり合って、彼女は意識を言葉に換える。

「柏木未来!」種田は横断歩道を渡りきったとき、フルフェイスのヘルメットに向って呼んだ。顔がこちらを向いた、躊躇い、思考、そして決意。種田が一歩、歩道から車道に踏み出すと、スロットルグリップが回った。

 車道を併走する種田。しかし、バイクは数メートル先にスタートダッシュをいち早く決めてしまった。通行人が何事かと関心を寄せるが、種田の迎え撃つ目線にさらされた者はそそくさと持ち場に戻る。種田は、歩道に戻り、鈴木にまたもや連絡を入れた。端末を日に何度も利用する体験は初めてだろう、種田は記憶を辿りつつ、柏木未来らしき人物が乗ったバイクのナンバーを鈴木に告げた。もちろん、鈴木は短時間で種田の身に起きた体験の詳細を尋ねた。だが、田所という人物の確認が優先事項であるため、解説は省き、拒否して通話を切った。

 柏木未来が乗るバイクはおそらく彼女の名前で登録されてはない。彼女名義のバイクは調べても登録には存在していなかったのだ。何者かが提供したバイク。盗難車というリスクは背負わないはずだ。向ったのはS駅、私たちから逃げるためにはそこで乗り捨ててしまった方が賢い。乗降者の多い駅に置いてしまえば、行き先を辿る選択肢を増やせる。

 種田は柏木の追跡をきっぱりあきらめて、以前に訪れた四丁目のレストランへ急いだ。