コンテナガレージ

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エピローグ 1-2

 二人がけの椅子が激しく揺れる。深夜の寝静まる、あるいはそろそろベッドに入る時間帯こそ、道路工事の作業は本格さを増すのだった。車窓から見える臨港沿いの道路は日中、トラックや大型の特殊車両の通行が主流、人間の活動時間帯における大胆な交通規制の敢行は大規模な渋滞が予測される。さらに、道路の整備工事は約二年後が完成予定、定期的に臨港を発着する輸送車両とは長期的に空間を共有するのであるから、周囲への波風は小さいに限る。そのため、夜中の静けさを消し去った振動と機械音それに甲高い金属音が轟く走行中のバスで、山遂は眠気と騒音に狭間でまどろむのだった。

 数分間、視界をさえぎる効果は絶大だと、改めて視覚に注がれる膨大なエネルギーを生命維持に回した山遂は、目を開けてわかりやすいため息をついた。そして、プリンと一緒に購入したペットボトルのコーヒーを口につける。疲れが取れる錯覚に溺れる山遂はここ二ヶ月、建設予定地における会合の帰りには大体というかほぼ毎回、甘いものを買っている。ただ、体重の増減を感じたことは、これまで人生で未経験である。元来、食に対する欲はスズメの涙ほどで、食べられれば良いという心持ち、周囲の同僚や上司は健康や腹周りの贅肉とを比べて、口々に僕の体型を見るたびにやっかみを投げ掛ける。その度、やせたければ、食べなければいい、という持論を山遂は返していた。しかし、体重や体型を気にする人物はこぞって今日だけ、明日から、と食べ物に対する欲は消せないらしい。もしかすると、彼らは他人をやっかむ意見を言いたいだけなのかも、口にすれば罵倒されそうな意見が浮かんだ。

 バスが減速した。終点の前に最終便が止まるのは初めてかもしれない、山遂は乗客に視線を送った。

 ステップを上がる乗客と目が合う。

 山遂は見通す瞳に負けて目を逸らしてしまった。

 彼女は運転席側から二列目、一人がけの席に座る。

 不意をつかれた山遂は、女性とのコンタクトですっかり目が覚めてしまった。