コンテナガレージ

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拠点が発展1-6

「姉さんが海外に住んでいて、日本に帰ってきたのか。仕事か?」相田がきいた。

「いいえ、詳しくは」

「海外って休暇は数週間も休めるのか、僕も外国の企業に就職しようかな」鈴木は両手を合わせて天に祈る。

「単位が違う。一ヶ月だ」熊田が訂正。

「嘘、そんなに休めるんですか!」

「休暇の申請は許可された、と受け取ってよろしいでしょうか?」種田が鈴木の驚きに気にも留めずに話を進める。その光景を見て相田が軽く笑った。

「申請が午後からでも正午になる前に帰って構わない。部屋が決まらないなら、明日も休んでいいぞ」

「ありがとうございます」機敏に種田は立ち上がって、体を前面に傾けた。「それでは、私はこれで」

「正直に受け止めるんだな」

「熊田さんの言葉に従いました。それだけです」数秒間種田の視線が熊田のそれと拘束する。沈黙。

「……まあ、いいだろう」

「なんか今のやり取り怪しくないですか。相田さん」鈴木は小声で相田に話す。

「お前の考えは絶対にあり得ない」種田が足早に出て行ったドアを見つめて、相田が言う。「熊田さん、休憩しませんか?」

「……ああ、そうだな。鈴木、電話番を頼む」

「いつの時代のやり口ですか?その省き方!」

 相田の開けたドアを閉じる前に手をかけて熊田は本日一本目のタバコを吸いに廊下、突き当たりの喫煙所に向かった。冷えた廊下の寒さにも慣れ始めた師走の下旬のことである。