コンテナガレージ

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拠点が発展2-5

 種田がリビングで首を捻っていると、備え付けのソファへ飛び込む形でアイラが落ち着く。そうかと思えばアイラは顔だけを捻って言った。

「ここに決めるわ。今すぐに住めるかしら?」種田も胸に平たい端末を抱える店員を目で追った。

「今すぐにですか?いいやあ、それは少々難しいですね。即答はできかねます」店員の顔から色が失われる。

「住むって言ってあげているのよ、私が。はんこも持ってるし、信用が足りないならここで現金一括、一ヶ月の家賃を支払っても構わないけど、それでも拒むの?」

「わ、わかりました。五分だけお待ちください、上司に確認を取りますので」

「まったく」アイラはバタ足でプールサイドに掴まるように、膝から下を動かす。

「決まったら私は帰る」種田はアイラに帰宅の意思を表明した、付き添いは契約までと決めている、その後の家族の、姉妹の生々しい接触は契約外だ。

「町の案内をしてよ。ガイドブック片手に歩くのは面倒だし、何より手が疲れるじゃない」

「端末がある」

「何を調べるかという明確な目的が存在してこその検索機能でしょう、日本的な町の詳細は正直まだ把握していないのよね。だからデザインもこれから考え直す。いいでしょう、休みが取れたんなら、たまには休息を謳歌しなさい。どうせ、息抜きは必要ないとか思っているんだから。誰かが言ってあげないとね。動かない性格は変っていないみたいだし。見てみなさいよ、外は休息を目一杯愉しむ季節じゃない」クリスマスのことを言っているらしいが、それとはこれまで関係性を結んでいないし、今後もこちらから進んで愉しもうとは思わない、種田は腰に手を当てて応えた。

「イメージの吸収だったら、あなた自身の調査でなくてはいけないのでは?」

「時差に狂った体内時計でセンサーを働かせたって、成果はこれっぽっちも期待できないの」アイラは身軽に体を起こして、ソファに座り直す。「ねえ、お兄さん。どうなの、住めそう?」種田の背後、キッチンの、明かりが若干落ちた場所で首を折って平たい端末を眺め、耳に通話用の端末をあてる店員にアイラは話を切り替える。

 アイラに呼びかけられた店員は、データ閲覧用の端末を脇に抱えて、背中を向けた。聞かれてはまずい会話なのだろうか、種田は店員が見せた一連の行動に意味付けを行う。