コンテナガレージ

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拠点が発展3-1

 漠然と署内にて出動要請を待ちわびているときは、時計の針が十二時に指すと、熊田たちは決まって席を離れ、一階の食堂に足を運ぶのだ。このときばかりは、部署に人を残さずに空ける。熊田の方針ではなく、本来彼らが所属する部署に緊急の要請はもたらされないことが当然であり、もし仮に要請がもたらされたとしても、真に緊急で熊田たちにしか任せられない仕事ならば、手を尽くしてでも彼らの端末のどれかに連絡は入るはず。よって、昼食時にもぬけの殻の部署が存在していても、まったく影響は受けない。何故連絡が取れないのか、という怒声を浴びせられても、配給された端末に直接かけるべきである、との返答を用意している熊田である。誰も出動しないとは言っていない。

 ショーケースで今日の定食を確認、券売機で食券を購入。食堂の列に並び、テーブルに着いた。熊田と相田はラーメン、鈴木は定食を選んだ。

「お前、魚が肉よりも健康にいいって思っていないよな」熊田の正面でスープをすする相田がレンゲから口を離して、隣の鈴木の定食をあきれたようにみつめた。

「昨日はしょうが焼き定食でしたから、今日は魚を食べたい気分なんです。まだ健康に気を使う歳じゃありませ、相田さんみたいに」

「ようし。今日はたんまり雪が積もってあるから、お前が埋まっても早々見つけられないだろうな」

「何を小学生みたいなことを。ああ、小学生も今じゃそんなことはしませんけどね」

「やるだろう。子供は」

「全然。甥っ子と姪っ子たちは、ほとんど室内だそうですよ、幼稚園とかそのぐらいの年代ならまだ遊んでますけど、小学生ともなるとね、まあスキーとかボード、あとはスケートとかどこか施設を利用した遊びなら外に出ますよ」器用な箸裁きでホッケをひらく鈴木は、湯気の立つ身をおいしそうにほおばる。すぐに白米が口に運ばれた。鈴木は視線を上げて熊田を見た。「どうしたんです?種田のことですか?」

「いや、このまま呼び出しがかからないなら、一人ずつでも交代で休みを取ろうかと思って」低い声で熊田は水道水の入ったグラスを傾ける。