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拠点が発展5-3

「神を信じる?」

「信じれば神は現存も過去にもそれから明日にも姿を見せるだろうし、疑えば神のいない世界をこれまた信じることになる。どちらも神から物語、選択、評価が行われる。この時点で解答は質問そのものが言わせているだけで、解答者に神の概念を認めさせてしまう」

「ある意味、教えは洗脳だったのよね」しんみりアイラは哀愁を込めてつぶやく。「彼らが悪いって非難してるのとは違うのよ。だけれど、もし別の国で生まれていたら今の私はいただろうかって思うの」

「いるは目の前に、カツ丼を日本に来た初日に食べたあなた。あなたが思いを馳せたのはすでにあなたでない、あなたの形をした別の誰か。あなたは現存するただ一人」

「英語で話しても通じるわ、その言い方」棘の痛い栗を投げつけられても、中身のおいしさを感じ取れて、アイラの声は種田には突き刺さらなかった。「ほとんど理解されない」そう、内部で発する。

「さあてと、次は車を借りる」アイラは細長い手を挙げて店員を呼び、カードで代金を支払った。おごられるのは気に入らない種田であるが、今回の付き添いのお礼がしたいと、言われた時のために清算をアイラに任せた。

 

それから、端末を手にするアイラの先導でレンタカーを借りに店舗へと赴いた。もちろん、運転も借りる手続きも種田が行う。

 軽自動車に乗り、行く先を音声でナビに登録、一路目的地の港湾を目指した。

「時間を計らなくいいの?」種田はハンドルを軽く握って、ミラーの位置を調節。

「ああ、すっかり、いいやてっきり忘れてた」アイラが女性にしてはめずらしく無骨なシルバー、鈍く光る時計の出っ張りを押す。信号待ち、数秒種田が見つめる視線にアイラは反応した。「ああ、ボーイフレンドとか婚約者の忘れ物って思い込まないでよ。女性物の時計が気に食わなくって、ウェアラブルとかって柄じゃないしね。時計は時を刻んで文字盤が見やすくて、耐久性に富んで、そこでデザインがやっと登場するの。だから自然と女性向けの時計は却下。必然的に男性物の時計を身につけるの。おかしいって思っているんでしょう?」

「何も言っていない」

「無言は真実を語る。うん?なんか違和感」

「目は口ほどのにものを言う」

「ああ、それそれ、よくわかったわね。トレースされちゃった」

 種田の体に振動が伝わる。コートのポケット、ちょうど外腿の辺りで小刻みに跳ねている。種田はそっとハンドルから左を解放、視線と首を前方に向け、視覚の水平を保つ。スピーカーに切り替えて、端末をドリンクホルダーに置いた。