コンテナガレージ

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拠点が発展6-1

 I市西部に近づくにつれて、巻き起こる風は強まるものの、ぱったり凪のように穏やかな時の流れも垣間見せるのだから、こういった変わりやすい天候が日常的に繰り返されるのだろう。

 熊田は、臨港沿い、まだ雪が積もり始めの道路に横付けされたパトカーをフロントガラスからの視界で見つけた。五分ほど前に打ちつけていた霰は止み、ワイパーに発砲スチロールを砕いた細かな白い粒のような雪が降り積もっている。車をパトカーの後方につけた。時刻は午後の一時である。

「おつかれさまです」警官は二人。一人は若い巡査で、もう一人はベテランの警官である。出迎えたのは若い警官だった。ベテランは気持ち遅れて車外へ足を下す、非協力的な態度が窺えた。落ち窪んだ目が、日ごろの不摂生と体の力みを感じさせる。がっしりとした体格に見えるのは、日ごろの鍛錬や運動による発達ではなく、過緊張による不自然で無意味な、身体に不可分の筋肉ある。

「I市ですか、死体の発見場所は?」熊田は唐突に挨拶を通り越して本題に入った。

「そこなんですよ」若い警官は地図を手に持って、熊田に見せるように折りたたまれた紙を広げた。「赤いポールが立っているのが見えると思います、その少し手前に遺体がありまして、ビニールシートの青の所です。ただですねえ、臨港沿いの道路から遺体が見つかるそこの敷地まではO市の住所が書いてありますけど、敷地から奥はどこもI市で手前はO市なのです」小柄な若い警官は、外の気温に慣れているようで、鈴木のように体を温めるリズミカルなステップを踏んではいなかった。のっそりと老年の警官が帽子のつばを直して会話に入る。

「要するに、捜査の手が及ぶのはI市の管轄でそちらが、あちらこちらを土足で踏み荒らすのは困ると、言っているのです」濁った白目。水滴がたれる帽子の下からぬるりと覗いた。

「正直に言いますが」熊田は二人の警官を見据える。「できれば、捜査にあれこれ詮索は入れて欲しくありません。もちろん、そちらの立場を考慮も尊重します。我々は独自に監視のような目を感じることなく捜査を進めたい、これが事件の解決にはなりよりの近道。内輪の争いが解決を長引かせる要因の大部分ですからね」二人の警官は熊田の発言に目を丸めた。ここまではっきりと正面きって単独の捜査を主張する人物に出会ってこなかったのだろう。従順な人たちは規則に縛られて、その規則を守ることに長年を費やすとないがしろにされた捜査に意識が移行してしまう。

 若い警官が苦い顔で言う。「上が黙ってませんよ、僕だってその方が、仕事をそちらに任せられるんであれば、お願いしたいですよ。体が空きますから、別の仕事にも取り組めます」

「領収書の清算と交通事故の車両誘導が仕事って言えるか」老年の刑事が唾を吐いてぼやいた。