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拠点が発展6-2

「昨日山岸さんが遠回りして帰るから、精算が終わらないうちに出動がかかったんじゃないんですか」老年の刑事は山岸というらしい。

「柏木、お前だって人のことを批判できる立場かよ。一時間も遅刻って、常識の範囲外の行動だ」

「取り込み中のところ申し訳ないのですが、話がずれてますよ」こういった緊迫感を鈴木は払拭するのが得意である。人懐っこさと中性的な顔立ちは相手に構える隙を与えない。

「現場の状況確認後、話し合いの場を持ちましょうか」熊田が提案を投げ掛ける。

「それでは捜査の手順が遅れる」老練の警官はやんわりと否定。

「ええっと、山岸さんでしたか、あなたの意見は?」熊田はわざとらしく名前の呼び間違いを懸念、気を使っているふりで相手が話しやすい雰囲気を作る。

「柏木を同行させるならば、大手を振って捜査してもらって結構」

「捜査は二人一組っていうルールを守れって怒鳴り散らすのは、誰よりも山岸さんですよ」柏木は気だるそうな先輩警官に詰め寄った。

「サボりが目的だと思ったのか。だから、子ども扱いがいつまでたっても終わらないんだ」山岸は白い息を躊躇いがちに、熊田たちを見てから吐き出して続けた。「捜査の狂ったテンポは、殺人の場合に特に致命的になる。捜査において重要視されるのは発生と発見後の迅速な対応だ。二人の頭が揃えば意見は必ずぶつかり、分かれる。捜査権はそちらにあるのだから、I西署はお前の判断を通して逸脱した捜査と感じたなら、報告に来ればいい。パトカーで待機している」

「……ただ休みたいだけのような気もします」

「何かいったか?」舐めるように山岸の瞳が柏木から引き離されてパトカーに収まる、暖かさを求めてパトカーに戻ったように、熊田からは見えた。

「というわけですが、よろしいですか?たぶんですけど、もう一度交渉しても考えを曲げるような人ではないことは、最初に言っておきます」申し訳なさげ、柏木が若干縮んだように、明らかに彼は恐縮していた。相田が言う。

「捜査は許可されたんですから、早いとこ遺体を見ましょうよ。ここ風が強くて、何十分もこんな軽装で外にいられませんよ」

「では、案内します。遠回りになりますけど」

 熊田たちは停車した位置から現場まで、外側を道なりに歩いていった。