コンテナガレージ

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適応性2-1

 熊田とO署の刑事たちは、遺体の忘れ物を届けた人物と共に公民館を訪れた。赤の軽自動車が一台、建物に頭を向けて道路から直接向きを変えず進入し駐車されていた。

「ありがとうございます。すいません、送っていただいて」鈴木が一度外に出て、真ん中に座る山遂セナが車外へ出た。頭を丁寧に照れくさそうに二度下げる。

「山遂さん、遅いですっ」公民館の自動ドアを面長な女性が今にも泣き出しそうに悲壮さを前面に押し出して山遂に駆け寄り、訴える甲高い声。「デザイナーさんが到着されてます。もう私だけじゃあ、間が持ちません」

「日本語、話せるんだろう?」

「私が英語で話すと、日本語で答え、日本語で話すと英語でしゃべるんです。おちょくられているとか思えませんよ」

「わかった、わかった。とにかく、中に入ろう」山遂は運転席の熊田に会釈、同僚の女性にひっぱられて公民館に消えた。頭頂部と肩に積もった雪を払ってサイドミラーに映る鈴木が冷気を車内に流入させて乗車する。

「奇抜な建物は馴染みがないですよね、日本人って」鈴木が建築物に対する見解を述べた。山遂を送り届けた鈴木を除く車内の人物は口をつぐむ、それぞれ脇においていた女性の死を考察していたための静けさである。

「色彩の感覚、根本的な理解構造が一致しないのさ」相田が腕を組んでこたえた。「日本という環境がもたらす作用かもしれないし、遺伝子によるものかも。奇抜な外観の家も数は少ないがあるにはある、うーん、個人の好みと風土に左右されるんだろうな」

「オブジェみたいなのって、一過性に思えて好きになれません」

「いつか取り壊すのに継続性が必要か?」

「だって、そんな不要な飾りを初めから置かなければいいんです。長く使えれば、修繕費用だけで新しく建てるよりも安上がりです」

「お前なんにもわかってないなあ」相田はあくびをこらえ、鼻を膨らませる。「新名所が雑誌やテレビで紹介された一度は足を運びたくなるだろう?」

「まあ、そりゃあ、誰だって同じでしょう?僕だけに限った心理とは思えません」